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「それで隊長は?」
「マメジに進言しに行きました。」


神倉所長から聞いた解剖結果を私たちは隊長に報告した後、分駐所に戻ってお昼休憩をとっていた。
進言しに行ったと言っても、捜一様の高きプライドは簡単に折れてはくれまい。単独犯だと気付いてくれればいいな、と祈るしかない。


「はい。お待たせいたしました、福岡うどんです」

「わー、美味しそう…!」

机の上に置かれたどんぶりからは湯気が立ち、いい香りが鼻を掠める。
今日は九重さんが作ってくれた。4機捜に来てからお昼は大体うどんだけだが飽きもせず半年は楽しめている。うどんって素晴らしい。


「福岡うどんコシがねぇんだよなぁ……」
「コシがないんじゃなくてもちもちしてるんですよ。その差がわからんなら文句言わんでくれます?」

九重さんの圧に負けたのか、文句を言った陣馬さんはごめんと謝りながら「いただきます」と大きい声で言った。


「中の指三本ってキリシタン狩りみたいですね。」

さすが九州男児の九重さん、学生の頃の遠足地は長崎らしい。

「幕府に迫害されたキリシタンの話もよく聞きますよ。」

「あれだ。あの有名な人。
 ラーメン野郎。
 いや違う、ラーメン二郎。」
「「天草四郎」」
「それ!」

「その天草四郎が島原の乱を引き起こす10年くらい前、雲仙でキリシタン達が殉教した、つまり殺されたんです。色々な拷問を受けたんですがその中に手の指を三本切り落とすっていうのもあって
 “この者は人間にあらず、獣である”
 そんな意味があったと…
 ま、俗説ですけどね。」


そういえば…
遺体を包むロープの荷札に中国語でケモノを意味する字が書かれていたのを思い出す。


「単独の殺人だったらどうなるんですか?」
「峯岸って奴がホンボシの可能性が上がる」
「20年前の千葉海岸の事件では14歳でしたけど、単独なら関係なくなりますもんね」
「殺害の動機は?」
「…貸した車を勝手に売られたって話だけど、それだけでそこまでするかどうか」
「他にも何かある?」


今回堀内殺害の容疑者に上がっているのは今のところ菅沼と峯岸2人だけ。年齢のこともあって、菅沼がホンボシだと思われていたが、単独犯なら峯岸が一気に浮上する。しかし、志摩さんの言う通り、車を売られただけで残虐な殺し方をするのだろうか…。


いつもと違って静かな伊吹さんに違和感を感じチラッと見ると、難しい表情をしていた。が、私の視線に気が付くといつもの笑顔を見せてくれた。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時

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