のんきな猫と死にたがり 3 (ページ29)

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「お待たせ」
「ただいまー」
「おかえりなさい、どうでした？」
「どうでしたって、聞いてたくせにー。」

メロンパン号に戻ってきた伊吹さんが「テッテレー」と言いながら、フードから私の仕掛けた盗聴器を取り出した。
…バレてたのか。でも怒っている素振りはない。

「心配なら来ればいいのに…」
「いつから気づいてたんですか？」
「無視すんなよ！ま、最初からー。」

気付いていたのにワザと聞かしてくれたのか。
と思っていたら突然伊吹さんは運転席の志摩さんを見ながら笑い出した。意味が分からなくて眉を顰めると「やっぱ志摩ちゃんとAちゃんって似てるね！」とまた意味不明なことを言い出した。
…どこを見てそう思ったのか。

「ああ、あん時Aちゃんいなかったのか！
　前にね？志摩ちゃんに同じような事されたの。そん時はボイスレコーダー入れやがって」
「そんなこともあったな」

あ、じゃあ志摩さんのせいだ。志摩さんのせいでバレた。

「そういやさっきUDIの所長から連絡があった」

「志摩さんに？なんで…」
「明日来てくれってさ」
「刈谷さんとUDIの解剖医が揉めたらしい。」

詳しいことは明日話す。
とのことで、とりあえず「了解です」と答えた。

＿＿

「UDIラボ所長の神倉と申します。どうぞこちらへ。」

…身長高いけど刈谷さんと違って威圧感がなくて優しそう。
そんな神倉所長に案内されて広い会議室に入ると解剖結果の資料を渡された。

「なにか解剖結果に問題が？」

「いや、解剖結果自体は鑑定書の通りで間違いありません。言ってみればうちが大きなお世話をしています。中堂といううちの解剖医が連続殺人と聞くと並々ならぬ思い入れを持ってしまうんですよ」

「連続殺人オタク？」
「…そんなとこです。
　そこで、過去2件のご遺体の鑑定書を勝手に取り寄せて調べたら不自然な点があると」
「不自然な点？」

「前回の殺人と今回の殺人どちらも両手の指三本が切断されています。しかし中堂は向きが違うと」
「向き？」
「切断された向きです」

中堂さんという人曰く、堀内の遺体には両腕の手首と肘の内側に表皮剥離があったため、堀内は椅子に座った状態で、手を固定されて指を切断されたとのこと。つまり掌が下の状態の切断。
しかし過去の事件は遺体の背中や手の甲側に擦り傷があったため、床に仰向けに寝かされた状態で指が切断された。つまり、掌を上にした状態。

「連続殺人じゃない？」
「…だな」

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