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「司法解剖の結果、切断された三本の指の断面には生体反応がありました。
 生きているうちに切断されたということです」


「…どうした」

思わず鳥肌が立った。

捜査会議でUDIの解剖結果を刈谷さんが報告していたのだが、“生きているうちに切断された”という一言のせいで、したくなくても頭の中でその光景を想像をしてしまい身震いがした。そんな様子に心配してくれたのか、志摩さんに耳打ちされて私も小さな声で「いえ、なんでもないです」と返答した。



「1人目の容疑者は菅沼聡55歳。被害者の堀内が働いていた中野のパチンコ店の店員で、堀内が辞める原因となったケンカした相手です。20年前の第1の殺人の遺体発見現場は千葉でした。菅沼は当時35歳で同じ千葉に住んでいました。」
「2人目の容疑者、峯岸智明。34歳。中古自動車販売業者。店の中古車を堀内に貸したところ勝手に売り飛ばされ揉めていたそうです。ただし峯岸は第1の殺人の時まだ14歳で仙台に住んでいました。」


捜一様の報告を真面目にメモしていると、志摩さんの隣に座っていた伊吹さんが突然「はーい」と挙手をした。
え、何か報告できることあったっけ。
志摩さんの方を見ると、諦めたような、落胆したような顔をしている。
…うん、無いってことだ。



「堀内は小心者のくせにカッとなりやすい性格だった。
 金目当てではなく峯岸との間になんかあって腹いせに車を売って怒らせて殺された可能性もありますよね?」


一番後ろの席から机の間の通路を歩きだす。
堂々と言える話じゃないんだけどなー、スゴーイ、イブキサンホンットスゴーイ。
すると刈谷さんが伊吹さんの前に立った。


「なんで堀内の性格知ってんだ?」
「ガマさんからの情報でーす。」
「ガマ?」
「知らねぇのかよ。茨城のグレートデカ…」
「堀内を担当したことがある元茨城県警の刑事の証言です。」

となりの志摩さんが立ちあがり伊吹さんにフォローを入れる。


「ところどころ記憶が曖昧なんですけど、」
「いや、ガマさんは必ず手がかりになるなにかを思い出す。」


「だったら思い出させてから言え!!」


超ド正論。言い返す言葉も見つからない。

後ろの席で一人笑いをこらえるようにしていると、志摩さんと目が合った。多分、伊吹さんを一緒に連れ戻せって言ってる。絶対そうだ、目が怖いもん。
でも、嫌です。
おひとりで頑張ってください。
そういう気持ちを込めて私は満面の笑みを返しておいた。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時

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