のんきな猫と死にたがり 3 (ページ26)

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「あー。覚えてるよ堀内。人懐っこい奴だった。
　この傷害事件の時は取り調べで心入れ替えるって泣いて泣いて謝って…2年くらって出所して、新しい職場で窃盗事件起こして姿を晦ました。
　逃げた先で傷害と強姦未遂。」

「そこで5年服役…」
「なんで再犯しちゃうかなぁ」

「小心者なのにカッとなりやすい男だった」
「堀内が最後に働いていたのは中野のパチンコ店。そこもケンカでクビになってます。
　堀内にギャンブル癖とかありました？」
「そういえば、ギャンブル絡みで揉めたって話があったな。」
「えっ？」

「あのときの相手は…

　…出てこない。」

「ガマさん！今めっちゃ大事なとこ！！」

＿＿＿＿＿

頑張って思い出そうとしてくれたけど、蒲郡さんは結局思い出せなかったため私達は家を出た。
今日の収穫は…堀内は小心者でカっとなりやすい男。ギャンブルがらみで揉めた“かもしれない”こと。
次の捜査会議で説明できるようなことは無い。つまり収穫はゼロ。
私達の任務が終了するまでに何か思い出してくれるとありがたいのだが…記憶というものは自分でもどうにもできないことだから仕方ない。

「ガマさん、ただの物忘れじゃないかも」
「…何が？」
「…」
「部屋の中に薬があった。俺の叔父さんが飲んでたのと同じ………何？」
「いえ、なんでもないです。
　なんでも」

いやぁー、さすがの観察眼。
…志摩さんの観察眼ってもはや変態レベルじゃないだろうか。
というのは心の中で留めておく。叩かれまくって細胞が死んでしまっては私も捜査ができなくなってしまう。それは絶対嫌。

「え、おじさんて何の病気？」

「脳血管型認知症。
　頭の中で小さな脳梗塞が繰り返した結果認知症と同じ症状が出る」

「…それって治るの？」
「個人差もあって半々かな…
　ガマさん、家族は？」
「いや、奥さん病気で死んじゃったし子供もいない。」
「そうか。これ以上進行したら一人暮らしは厳しいな。どこかの施設に入れるしかないかも……」

伊吹さんはふと立ち止まり、真剣な表情になった。
そして何か考えると「…うん」とだけ言って車に飛び乗った。
私はまた一つ違和感を覚えた。

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