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5時間UDIにも入れず外で待つだけなら…
と、私たちは八王子に住む蒲郡さんに会いに行くことにした。堀内がどんな人だったのか聞きだすために。





「あっ!!フォンさん!!」
「イブキサーン!!」


お邪魔します…とお家に上がると、居間に蒲郡さんだけでなくコンビニ強盗の時にベトナム語を訳してくれた外国人留学生のフォンさんがいた。


卓袱台の前に座る蒲郡さんに名乗り「突然お邪魔してすみません」と挨拶をすると、いいよいいよ、と微笑んでくれる。伊吹さんの言う通り気さくそうな人で、たった一言の会話でも心を許す気持ちがわかった。


「そうだ、お茶入れよう」
「自分がやります。」
「えっ?」
「足、大丈夫ですか?あれ、」

志摩さんの目線の先には歩行器があった。確かに部屋を見渡せばところどころに支えになるよう、つっかえ棒で作られた手すりが多数ある。


「あぁ。あれは家内の。半年経つのに捨てられなくて…
 だから座って!」

自嘲気味に笑う蒲郡さんに少し違和感を覚える。
奥さんが亡くなっているなんて言われなければ気が付かなかった。仏壇はないし、部屋の中に奥さんの写真とか全く見当たらないから。


「皆さん、それじゃ!」
「ばいばーい!!」

私達と入れ違いでフォンさんは帰るところだったようで大きな荷物を持って出ていった。その後ろ姿はなんだか幸せそう。


「ベトナムに帰るんだって!
 借金とプラスアルファようやく稼いで向こうで待たせてる彼女とけっこーん!」
「へー。良かったな。」
「素敵ですね」

「沖縄のマイちゃん元気かなー…

 あっ、ありがとう!」

台所から戻ってきた蒲郡さんから伊吹さんは麦茶とコップを受け取ると、私たちに注いでくれた。



「市のボランティアなんですよね?他にまた誰か担当するんですか?」
「いや、一旦やめようかと思ってる。」

「そうなんですか?」
「えっ?やめるの!?」

「錆だらけで悲鳴あげてんだよ。体もここも。」

蒲郡さんが頭を指差した。


「いやいやいや、まだまだ若いでしょー」

「霧がかかったみたいにぼんやりするんだ。
 もうずっと、麗子の笑った顔が思い出せない。」


蒲郡さんは歩行器を見つめると悲しげな表情を見せた。


「あ、何を聞きに来たんだっけ?」

「ああ、A。」
「はい、
 昔蒲郡さんが堀内という男を担当したと資料に書いてあったので…
 聞きたいことがあるんです」


私は刈谷さんから(無断で)拝借した資料を机に広げた。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時

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