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ピンポーン、
と来客を知らせるチャイムが鳴ってインターフォンを見ると画面越しに隊長のどぎつい眼差しが映っていた。顔が「早く入れろ」と物語っているため私はすぐさま扉を開けた。
「お邪魔します。
へー、意外と綺麗にしてる…。あ、そういえば綺麗好きだったもんね」
「なんできたんですか…」
「なんでって…引っ越しの挨拶？」
盗聴器が仕掛けられて隊長達は官舎に住むことになったのだが、それがまた図ったかのように私の家の隣に引っ越してきた。その、挨拶(？)らしい。
「ゆたかくん、でしたっけ？はいいんですか」
「ハムちゃんが見てくれてるから平気。
それよりいろいろ買ってきたの。はい。」
「え、重っ…」
エコバックを手渡されて中を見ると、主婦が昼間にスーパーで買うような食材が入っていた。
…私の家には何もないってことを知ってたのだろうか、という量。
「料理つくれないんでしょ？」
「わー…よく覚えてましたね、そんなどうでもいい情報」
「可愛い後輩のことは覚えてるものなの。
作ってあげる、て言ってもチャーハンで良い？」
「超大好物です」
隊長はエプロンを着けるとチャチャっと作ってくれた。
久しぶりにうどん以外の手料理を振舞われて嬉しかったのは、言わないでおく。
「「いただきます。」」
「うんまいです。コンビニ弁当とは全然違う」
「そ、お気に召したようでなにより。」
ローテーブルで正面に座る隊長が笑う。
少ない会話でも気まずくならないのは相手が心を許した隊長だからだろう。
「ねぇAさ」
リス並みの勢いで頬張っていた炒飯を無理やり飲み込んで「はい？」と返事をする。
「私の運転手にならない？」
「………え？」
「ふっ…聞いてみただけ。
もしやる気があるなら全然構わないけど、どうせ現場の方がいいんでしょ」
呆気に取られて食べる手が止まる。聞いてみただけ、と言うが結構本気の目をしてたから、どう答えたらいいかが分からなかった。
「なに？」
「いや…現場の方がありがたいですけど、隊長の命令なら、従います。」
今度は隊長の手が止まり、口をおさえて笑い始めた。
…そんなおかしいこと言っただろうか。
「本当に従順になったわね」
「それ褒めてます？貶してませんか？」
「だって……前はあんなに反抗的な態度だったのに、2年前までは生意気娘って思ってたんだから」
隊長は懐かしそうに微笑んだ。
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作者名：古町小町 | 作成日時：2020年10月18日 17時
