のんきな猫と死にたがり 3 (ページ2)

今日:7 hit、昨日:7 hit、合計:82,011 hit

7#2 ページ2

・

結局伊吹さんに気を取られ引いていたせいでお昼を食べ損ねた。
不機嫌ながらも現場に着いてしまったため車を降りる。

「404初動捜査入ります。」

靴にカバーをつけて遺体が発見された7番の部屋に向かう。部屋の前には猫砂が散らばっていた。
失礼しまーす、とハンドライトをつけて中に入る。

「うわー…」

トランクルームは荷物の管理のためにあるはずなのに、部屋の内部には衣類や食料など…保管というよりは生活感が丸出しだった。トランクルームには住んではいけない、これは法律違反だ。
遺体を見ると、ワイヤーのような物が首にかかっている。窒息死だろうか。
体の上には大量の猫砂がかけられている。

「自殺？」
「この砂は誰がかけた」

「猫。ニャンつって！！」

「…他殺じゃないですか？」
「え、なんで」

「一人で首を吊るには体重を前にかけなければならない。やるとしたら、膝を立てるのが普通です。
　でもあの座り方だと体重を前にかけられない。
　もちろん断定するには早いですけど…」

死体を見ながら淡々と答えると、なにやら強い視線を感じ、振り向いて二人の顔を交互に見上げる。
すっごい見つめられるんだけど、あれ、私変なこと言ったっけ。

「どうかしました？」

「Aちゃん、変なこと考えてないよね」

それを言われて、ああ。と気が付く。解剖医でもないのになんで知ってる？ってことか。
もちろん私自身が実際に行ったわけではない。

「昔担当した事件で似たようなことがあったんですよ。首吊り死体の」

納得したのかはわからないけど、また私は捜査のために視線を戻した。
床に散らばる新聞紙の日付を見ると2016年。

「いつからいたんだ？」

「うーん…」

トランクルームから出て、第一発見者の管理人に話を聞くことにした。
管理人曰く、今日の昼、猫がドアの所を掘っているのを見つけて、契約者が猫に餌付けしてると疑った。それで部屋の契約者に電話したんですが繋がらず、スペアキーで入ろうとしたら鍵が開いてて遺体を見つけたらしい。

「あの人を見たことは？」
「いや、ないです。ないですよ！だってまさか暮らしてたなんて！」

管理人から手渡された資料を見ると、契約者は山中誠二で口座名義も一緒。おかしな点はない。
一枚めくり免許証のコピーを見る。

「あれ…」

…おかしいな点見っけ。遺体と山中誠二の証明写真は似ても似つかない。

「契約開始が2009年。」
「10年も前？」
「あの死体は誰なんだ……？」

→