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田島さんの言っていた未解決の連続猟奇殺人は、
20年前に起きた千葉海岸における刺殺遺体遺棄事件と、15年前に起きた荒川区自然公園における刺殺遺体埋葬事件の二つのことだった。
被害者はどちらも胸を滅多刺しにされ、両手の中、三本指だけが切り落とされるという、どちらも全く同じ手口で殺されている。
さらに、遺体を包む布には荷札がついていて、獣の左側の文字が書かれていた。中国語でショウ、“獣”を意味するものらしい。
この文字と指の切断については外部に公表していなくて、犯人にしか知りえない情報とのこと。
そして今回八王子南で見つかった遺体も、同じような手口で殺されている。
被害者は堀内伸也、41歳。前科二犯で2回服役していた。
殺されてから一か月行方不明だったが捜索願は出されていない。だから発見が遅れたのだろう。
…確かにこれは単独の事件じゃない可能性が9割。
捜一様の報告をメモしていると
「あっ!あっ!大発見!!」
伊吹さんが捜査会議という真剣な空気が漂う場所で勢いよく立ち上がり、興奮気味の声を発した。
彼の両端に座る私と志摩さんは慌てて腕を掴むと、強制的に着席させる。やめてくれ恥ずかしい。
私達の焦りを気にも留めず伊吹さんは資料をめくると「堀内、茨城出身。俺と同じ。」と、嬉しそうに超どうでもいいことを教えられる。
相手にするのが面倒で私はまたホワイトボードに視線を移した。
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会議を終え机の上でトントン、と資料を整頓していると「誰よりも早く犯人捜そうぜ!」と伊吹さんがウズウズし出す。はいはい、と流しながら席を立ち、会議室を出ようとすると
「おい。待て。」
と刈谷さんが近づいてくる。え、コワいコワい、何事ですか。
「お前らがなんで呼ばれたと思ってんだ。」
「優秀だから?」
…いいえ、それは違います。お手伝いのためですよ。どっから来るんですかその自信。
でも伊吹さんは素で言っているから否定するのが可哀想。
「こいつはバカか?」
「あー、」
「んー、否定できませんね」
「なんで?」
「お前ら機捜は俺たちの手伝い。小間使いだよ!俺たちの足になるんだよアッシーだ!」
「志摩さんこれは笑うべきですか」
「気にするな」
「え、アッシー…?ふるっ!!」
「口を慎め。古い世界に生きてるんだよ。」
「聞こえる嫌味を言うな。」
ウケ狙いなのかわからないけど聞いたことのない“アッシー”という言葉に、私は「あはは…?」と愛想笑いを浮かべた。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月18日 17時