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「へぇー、そんなことが」

「はい」

「とうとう伊吹に一泡吹かせられたね」


桔梗の言葉に何か言い返したかったが、有言実行でギャフンと言わされたのは事実だ。志摩は開きかけた口を閉じた。




バーベキューでは話せなかった香坂の事件の新事実を隊長室で報告した。
当時香坂の事件で志摩が伏せてしまったことを見ていたから、最期まで刑事を貫いた香坂のことを知って桔梗は安心したような表情を見せた。





「そういえば…」

「ん?」


言いづらいのかなんなのか、志摩は、なんでもないです、と口を噤んだ。不審に思った桔梗は目を細めてじっと見つめた。


「気になるじゃない。なに?」

「…Aと羽野麦ってどんな関係があるんですか?」


いや、なんか、羽野麦の名前を出したとき過剰に反応したんで…

そう言い訳じみたことを告げられて、桔梗は思わず「ふっ」と笑い声を漏らした。
予想しなかった反応に今度は志摩が目を細める。


「ごめんごめん…」


話すなと言われているが、自分で顔に出してしまっては隠すこともできないだろう。
桔梗は時計をチラッと確認すると、志摩にソファに座るよう促した。




「本当は話すなって言われてるんだけど…」
「え、話してくれるんですか?」
「隠せてないなら気になるのも無理ないわ。

 それに、どうせ志摩なら教えなくても調べあげるでしょ。」



…図星だ。
自分について調べられたから調べ返してやろうとか考えていた。
でもこんなに簡単に話してもらっていいのだろうか。多少罪悪感を覚えたが話してくれるというなら…聞かせてもらおう。


「関係を説明をするには2年前の事件を掘り返す必要がある。」

「池袋の違法賭博場一斉摘発…」

「そう。当時池袋署の刑事課にいたAは組対と合同で捜査を行なっていた。
 私達はエトリを必ず捕まえる事を条件に羽野麦から情報を貰っていた。でも結局エトリを捕まえられず、賭博場だけ摘発。

 その摘発から数日後…新たに事件が起こった。」



志摩は桔梗からタブレットを受け取ると、映っている資料を見た。小さな新聞記事のようだ。
日付は、2017年1月16日月曜日。
記事の内容は拳銃使用による殺人未遂事件。
被害者は、20代女性…

被害者は…羽野麦だろうか。発砲したのは辰井組、エトリか?



「被害者の20代女性は、AA。発砲した犯人は辰井組の幹部。」

「え…」


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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時

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