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「羽野麦…?」
時刻はお昼を過ぎて3時手前。
分駐所で遅めのお昼を食べている最中、エトリの情報をタレコミした人について話をしていた。
「隊長がその子を匿ってるってこと?」
「そう。当時羽野麦はピアノバーでバイトしてて、そこでエトリと知り合った。」
「ヤバい奴だと気が付いて警察に協力した。」
二年前の事件で羽野さんはエトリを捕まえることを条件に警察に協力していたのだが、結果私達警察の力量不足で捕まえられず、逆にエトリから命を狙われる羽目になってしまった。
当時私達は…1人の命より多数の命を取った。
警察の行動としては当たり前なのだが、隊長は指揮官だった当時組対部長のマメジを許せなかった。
この事件は2人が犬猿の仲になるきっかけの一つだ。
「羽野さんは警察にとっては10億の女神で、エトリにすれば10億の儲けを潰した女」
「日本にはアメリカのような証人保護プログラムはないからな」
「でも警察が個人的にそこまでする必要があるんでしょうか。」
「ないな。だがやっちゃいけないってことも無い。
桔梗なりの責任の取り方なんだろう。
…ん?嬢ちゃん息子の存在は知らなくても羽野麦のことは知ってたのか?」
「はい、当時池袋署にいたので…あ、お疲れ様です」
噂をすればなんとやら、隊長がちょうどいいタイミングで入ってきた。
「お疲れ。
高飛びを考えて航空会社に照会かけたけどアオイケトウコ名義のチケット購入はなかった……
ん?なに…?」
伊吹さんからの熱い視線に違和感を感じ取った隊長は一旦話すのをやめた。
「羽野麦の話をしてた。」
「あぁ、ハムちゃんの?」
「ハムちゃん?」
「羽野麦のハとムをとってハムちゃん。」
「かわいい」
「なんでも食いつくな。お前は。」
志摩さんは呆れながらも、さっき回った場所で得た情報を纏めた書類を隊長に渡した。
「青池透子の職場の社長、冴羽克己。通報を拒んでおり何か事情を知っているようです。」
「この男がエトリの可能性は?」
「似顔絵を見せましたが似てないって」
何か引っ掛かったのか、書類の一箇所を見ると隊長は眉間にシワを寄せた。
「PCショップACE?なんかで聞いたな。組体絡みだったような……ちょっと聞いてくる」
「隊長さすがにそれはまずいですって」
「なに?」
引き留めた私が気に食わないのか、不機嫌な表情で見つめられる。
それでも私は珍しく引き下がらなかった。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時