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1機捜の仮眠室のベッドの寝心地の良さに感動した。
4機捜の分駐所では堅い床に薄い布団を引いているから……不満が言いたいわけではない。ただ感動しただけ。
たったの3時間でも「よく寝たな」と気持ちよく起きられたのだから、感動もするだろう。
お手洗いに行って顔を洗っていると、廊下から「アハハ!!!」という騒がしい笑い声が聞こえた。聞き間違いでなければ、多分、伊吹さん。
ドアを開ければ、さっき以上に鮮明に声が聞こえる。声のしたほうに近づいていくと長身2人が立っていた。
「九重さんもいたんですか…酒臭っ!」
いつもスーツをかっちり着こなす真面目代表の九重さんが、ネクタイを外してカーディガンを全開にしている。わー、超だらしない。九重さんらしくない。
伊吹さんは…うん、いつも通り、超ラフだ。
「Aちゃんどこ行ってたのさ!!志摩のこと一緒に調べようとしたのに」
「ちょっと喋らないでください臭うんで」
「うわっ、辛辣ー!!」
「九重さんも酒臭い。二人ともよくその状態で署に来ましたね」
「俺は無理やり飲まされたんです」
すると、後ろから「なにやってんの」という隊長の声が聞こえた。
「…お酒飲んでる?」
「いや、九ちゃんがね?不良警部補でね?」
「自分が飲めち進めたんやろ」
「休みの日は飲んでもいいけど署に来るな。」
隊長は2人の間を通り過ぎる。
私も帰ろうかと思ってかかとを返すと、伊吹さんに腕を掴まれてしまった。
「隊長だったら知ってるかなって。」
「遺書の話です。香坂刑事の。」
「遺書…?」
「手紙な?最後の手紙!」
本気で調べていたんだ、しかも、すでに私の知らない話にまで来ている。
驚いたとともに、こんな簡単に踏み込んでいいのか、と思った。まぁ、人のことは言えないけど。
私は好奇心にブレーキをかけたのに、伊吹さんは今朝からアクセルを踏み続けたまま…
大方九重さんは伊吹さんに無理やり付き合わされているのだろうけど、2人が調べていることは簡単に触れてはいけない、志摩さんの過去・暗い闇の部分だ。
「帰りなさい。面白半分で調べることじゃない。機密です」
隊長の言葉が重く圧し掛かる。
もちろん知りたいと思うことは人の自由だが、相手を傷つけることに繋がるのであれば思うことだけで止めるべきだ。
「面白半分じゃないっすよ。志摩の相棒だから調べてます」
隊長はピタッと足を止めて、伊吹さんの方へ振り向いた。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時