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伊吹さんはすべてを理解したように何度も何度も頷きながら「でも、よーくわかった…」と低い声を発した。
と同時に分駐所に志摩さんが戻ってきて、私は柄にもなく伊吹さんの名前を何度も読んだ。
けれど志摩さんの存在に気づいてくれなくて「志摩は俺を舐めてるな」「だってそうだろ!?」「俺に大事なことなんにも言ってない!!」と本人を前にして不満をぶちまけた。

「伊吹!」

陣馬さんのドスの効いた声にやっと志摩さんの存在に気づいたけど、居心地の悪い雰囲気に息が詰まりそうになった。


「…報告を終えたんで帰りまーす。」
「オツカレサマ」
「俺も帰ろう…「話の途中。」
「6年前のこと今さらほじくったってしょうがねぇだろ!」
「昔の話じゃねぇよ。志摩にとっては今も何も終わってない。
 なぁ志摩、何があった?どうしてウイスキー飲めなくなった?」
「お前には関係ない。」
「ある。俺は404。お前の相棒だ。」


ドタンっ!!!と、志摩さんが勢いよくロッカーを閉めて、驚きのあまり私は耳を塞いだ。間に合わなかったけど。
怒声を上げる様子は見られなかったためゆっくり手を離すと志摩さんから感情が籠った「うぜぇー…」という声が聞こえた。



「聞き方に工夫がない、刑事のくせに。
 話せって言われてはいそうですかってホイホイ答える容疑者がいるかバーカ!
 …刑事だったら自分で調べろ。まっ、お前ごときの捜査能力じゃ調べられないだろうけどな」
「おー、言ったなー後悔すんぞーギャフンと言わせんぞー」
「はいはいギャフンギャフン」
「おい2回言うなよ。心のそこからギャフンと言わせてやるよ」


志摩さんはさっきまで軽くあしらっていたが、漸く伊吹さんに向き直ると「できるもんならやってみろよ」と挑戦状を受け取った。



私は彼の後を追うようにして廊下へ出る。


「志摩さんいいんですか?あの人良い意味でも悪い意味でも有言実行しますよ?」

「どうせわからねえよ、本当のことなんか。
 あぁ、そうだ。お前に聞きたいことあったんだよ」

「はい?」
「伊吹には言うなよ。後で面倒になりそうだから」

「?…はい」


「今から隊長の家行くんだけど」
「え」

ラブですか、突然のラブなんですか!?
とか思ってたら「誤解すんなよ」と怒られた。


「隊長の家の給湯器が壊れたらしいから修理業者に立ち会うんだよ。“羽野麦”がいるから」


私はその名前にビクッと過剰に反応してしまった。



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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時

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