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伊吹さんのしつこさに負けた九重さんはタブレットを渡して、知りうる範囲を説明をしてあげた。


__

2013年、8月8日の未明、狛江市平羽で男性の遺体が発見された。
男性は警視庁捜査一課所属の巡査部長、香坂義孝。転落死と見られる。
場所は香坂刑事の自宅があった雑居ビルの敷地内で遺体を発見したのは同僚の刑事。
香坂刑事の遺体は靴を片方しか履いておらず、もう片方の靴は屋上に残されていた。
近くにはウイスキーのボトル…

__



「報道はここまで、続報はありません。」

「Aちゃんもしかして知ってたの!?え、どこまで知ってた??」
「…今の九重さんの説明までです」
「嘘だ!!どんな些細なことでもいいから全部教えて」


しつこそうだな…


めげることを知らない超好奇心旺盛な伊吹さんから逃げるのは容易いことではない。
ペットみたいにエサで釣られてくれればいいんだけど、そこは人間を発揮しちゃうから「あっちいけ」ってできないんだよな。


「Aさん俺を盾にしないでください」
「だって伊吹さんしつこいんですもん」
「卑怯ですよ、俺もうんざりしてるのに」


「そこ聞こえてるぞ!!」と伊吹さんに言われて二人で黙る。
そして再び尻尾を振って教えるように急かされた。



「あ、陣馬さんなら何か知ってるんじゃないですか?」
「俺に振るな!」

帰り支度を進めていた陣馬さんは矛先が向けられてものすごく嫌そうな顔をした。

「陣馬さんは前に組んでたんですよね?志摩さんと。」
「大分前な!俺が一緒にいたのは志摩が捜一に入る前……」


突然ガタガタ!!と音を立てて伊吹さんが椅子から大袈裟に転げ落ち「そ、ソウイチ!?ソウイチって捜査一課のソウイチ?」と刑事なら誰でもわかることを聞いてきた。


「そこに、志摩は、捜査一課にいたの!?」
「聞いてないのか?」
「4〜5年いて優秀だったって。この事件を期に飛ばされたみたいですけど。」


すると私に視線が集まる。
…え、教えなかった私が悪いんですか?
てっきり伊吹さんでも知ってると思ってたのは私だけですか?


「Aちゃんももしかして…?」
「いえ、私は機捜と所轄だけですよ。」
「おお、よかった」


よかったとはなんだ。心外な。
どうせ私は所轄どまりの刑事ですよ。捜一になんて憧れたことは一度も…あったりしたな。
それを思い出して反論するのはやめておいた。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時

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