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“当番勤務中の仮眠は2時間”

というゴシックの文字の横に

“寝られる時に寝ろ!!”

という手書きの文字がある。
布団に入ったら3秒で寝落ちする仮眠のプロ・陣馬さんが書いたんだろう。


昔…と言っても、4年前の約1年間
私は2機捜にいたから睡眠の大事さは理解している、つもりだけど
やっぱり今日も眠れなくて、カウンターで頬杖をついて退屈していた。

こうやって眠れないとき、大抵私はパソコンと向き合い始末書を下書きして時間を潰しているけど、今日は無いから、暇だ。でも睡魔はなかなか訪れてくれない。
嬉しいようで悲しいような…無いとなるとそれはそれで寂しかったりする。



ふと後ろに気配を感じて振り返ると癖毛ふわふわ志摩さんが立っていて「…今日も寝てないのかよ」とぶっきらぼうに言われた。そしてキッチンの方へ回るとグラスを一つ取って水を飲み始めた。
志摩さんの方こそ、今日も起きたのかよ、だ。
私はそもそも起きていたけど、志摩さん達が仮眠を取り始めてまだ1時間は経ってない。


「…志摩さんは、今日は何に妨害されました?」

おー、答える気はなさそうだ。
手元の、空になったグラスを見つめて黙したまま。

「じゃあ、質問を変えます、
 どんな夢を見ました?」

するとこっちを向いて志摩さんは「…何も」と答えた。


「首元、汗が伝ってますよ。息も上がっていたようですし」


何もないわけがない。

自分の首元を指差して指摘をすると、極まりが悪そうに目を逸らして汗を拭った。
深呼吸を繰り返すのは息を整えている証拠だ。そうでなくとも無理に落ち着かせているのが分かる。


話したら、楽になるかもしれませんよ?なんて無責任なことは言わない。
…話してくれるのなら聞くけど。


何に魘されているのか、何に悩んでいるのか、何に苦しんでいるのか、
知りたいとは思うが、どうせまたいつものように綺麗に躱されるのだろう。
分かっていたからそれ以上は何も聞かなかった。




「もう眠れないならシャワーでも浴びてきたらどうですか?リフレッシュできますよ。
 まだ時間はありますし、密行なので急ぎもないだろうし」


「…そうだな、行ってくる。」



志摩さんに「行ってらっしゃい」というと「ああ。」とまたぶっきらぼうに返された。






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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時

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