のんきな猫と死にたがり 2 (ページ27)

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「お待たせしましたフォー！！！」

「やると思った。」

お昼休憩となり、伊吹さんはどっかで見たことのあるギャグをしながら、カウンターに5つどんぶりを並べた。

「…私パクチーアレルギーなんですよ」
「苦手なだけだろ」
「Aちゃん好き嫌いはやめましょうね」

草には罪はない。それでも嫌いなものは嫌いなのだ。

「なんだこれ…草か！」

「パクチーね！美味しいよ。」

陣馬さんもパクチーが苦手だったのか、もしくはフォーがだめなのか、醤油を入れて味をつけまくる。邪道だと止めにかかる伊吹さんと二人が騒いだおかげで分駐所に戻ってきた九重さんの「糸巻さんが」という声はかき消された。

「こっち無視で。糸巻さんなんだって？」

「例のGOTOタグの最初の投稿、投稿自体は削除されてたんですけど、キャッシュを見つけたって」

タブレットを受け取って志摩さんとFacenoteのキャッシュを見る。
全く読めないベトナム語に加えて“GOTO KONBINI”というハッシュタグ。

「アカウントはまだ生きてて名前はファン・クアン。出身はホーチミンになってます。」

「和訳するとどういう意味なんですか？」
「自動翻訳だと上手く訳せなかったって」

翻訳先生が無理なら私なんてまず無理だ、お手上げです。

「署内にだれかベトナム語わかる人は……」
「署にはいねぇだろ。」
「いるよ。署内じゃないけど聞けるよ。」

その人物とは、伊吹さんの師匠という蒲郡さんだった。
ベトナム人の留学生と知り合いのようで、伊吹さんが電話をすると快諾してくれた。

「どうでした？」

「意味は、“理不尽には理不尽で返せ、俺達には金を奪う権利がある”で、
　ここの…“binh”が余計らしい。」
「書いたのは日本人ってことか？」
「ガマさんはそう言ってたよ」

日本人となると…
私達のなかで一人の男が頭を過った。日本学校事務員の、水森祥二郎だ。

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蒲郡さんの一言で捜査線に一気に浮上した水森は、自分で起こした人材サービスの会社が倒産して負債を抱えていたそうだ。
その後川越の監理団体の職員になったがそこも業務停止命令で潰れて、今の日本語学校の事務員に就いたらしい。しかも、監理団体でベトナム語使っていた…

それを桔梗隊長に説明すると、とうとう継続捜査が終了した。
機捜だからそう命令されれば終わりなのだが…
そんなことわかってるけど、心にわだかまりが残ってしま物足りなさを感じた。

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