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ソファで作業をしている志摩さんの手が止まった。私の質問に対しての返答を、確りと考えてくれてるのだろう。彼こそ真面目代表だ。
「日本は連帯責任システムがあるからな。他人にリスクを背負わせることで責任の重さを感じさせるんだろ。
…まぁ、お前に限って意味ないだろうが」
よくお分かりで。心の中で「お見事!」と褒めておいた。
「でも…」と続けて志摩さんはとうとうパソコンを閉じた。
そして顔を上げたため、大量のファイル越しに目が合う。いつも通り光がともってないような黒い瞳と。
「一番の理由は単独行動には危険を伴うからだろうな。
何かあってからじゃ遅い、間に合わなかったじゃ済まない。だから「今からここに行きます」って事前に報告しておかなければならない。」
言葉に起こされると、ああ、確かになー、と納得できた。
それと同時に、当たり前のことなのになんで自分ってやらないんだろうとも思えてくる。ま、無意識だから直そうにも直せないけど。
「…手柄を横取りしたい訳でもなければ、一人で動けるのが羨ましいという訳でもない」
その言葉は、私に投げかけてるようには聞こえなかった。かといって誰に投げかけているのかもわからない。目が合ってるはずなのに合ってないような、いつもの志摩さんじゃない気がする。
ふと、捜一の人達が志摩さんのことを“相棒殺し”と呼んでいることを思い出した。
最初はその噂を鵜呑みにして若干警戒心が拭えなかったけど、今は志摩さんがそんなことをする人には思えない。
聞けば不穏な空気が漂うだろう。そんなのは百も承知の上。
それでも私は好奇心が勝り「それは香坂刑事と関係がありますか」と聞いてしまった。
答える気はないのか、口を開こうとしない。
「4機捜の移動が出たとき、組む相手に関して多少調べたんです。伊吹さんは足が速いって情報しか得られなかったけど、志摩さんは…」
「誰から聞いた?」
「えっと、あの、はげのっぽの
……刈谷さんです」
すると突然志摩さんは「あははっ!!」と吹き出して笑い出した。
ここまで声をあげて笑う志摩さんは珍しくて困惑していると「ネーミングセンスないな」と言われた。心外だ。
「Aは…香坂とは知り合いだったのか」
「8年も前のことです、交番勤務を経て初の異動先に香坂さんがいたんです。
仕事熱心で正義感の強い人で
…正直苦手なタイプでした。」
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時