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「おっさきー!!」
「…お疲れ様です」
珍しく始末書のない伊吹さんはご機嫌な様子で帰っていった。
私はまた書いているというのに…
まぁ隊長を怒らせたのは私だから仕方ないか。
恨めしく思いながら伊吹さんの背中を見ていると代わりに志摩さんが1機捜から戻ってきた。
私は慌てて表情を無にして、体を前に戻した。
「…フッ……」
志摩さんに鼻で笑われた気がする。分駐所には志摩さんと私以外にいないからそうだな、いやもしかしたら幻聴かもしれない。
気のせいだと信じてパソコンと真摯に向き合い反省文を打ち続ける。真摯に。
「捜査中うろちょろする癖にちゃんと始末書を書く辺り…お前って案外真面目だよな」
思いがけない言葉に一瞬手が止まってしまった。褒めてくれてるの?いや、でも前半は貶してるよね。
どう返答するのが正解か分からなくて戸惑ってると「今日は何枚書くんだよ」と、私の様子を気にせず質問をしてきた。
「…2枚ですよ、でももう終わります。これくらい痛くも痒くもない」
「伊吹の背中睨んでたくせに。始末書仲間がいないもんな、寂しいのか」
「そ、れはそれです、これはこれ。寂しいとかこれっぽっちも思ってないです」
そうだ、ちょっと羨ましかっただけで。寂しくはない。
「…Aはさ、なんでいつも単独行動すんの?」
また説教かな、と思ったけど純粋な疑問だったみたいで、怒っているようには見受けられなかった。
キーボードを打つ手を止めて考える。なんで?そう聞かれると特に理由がない。
無意識に動いてるから私自身なんて話せばいいかわからない。
「なに、言えない理由でもあんの?」
「いえ、そんな訳では…考えるよりも体が動いてて…
あ、本能ですかね?
血が騒ぐ感じ」
「お前は本当に猫か…
所轄の時の相棒は?そん時どうしてたんだ」
「……自由にさせてくれました。
前にも言いましたけど、ほら、“終わり良ければ総て良し”です」
すると志摩さんは納得したのか、はたまた諦めたのか、興味なさげに「そう」とだけ言った。
2人とも黙れば、カタカタ、というキーボードの音だけが室内に響く。
私ももう終わると言いつつあと1枚、やっと折り返し地点に差し掛かった。
多分、というより絶対、話さないで集中した方がいいのはわかってるけど、
「逆になんでそんなに怒られるんでしょうか。捕まえられてるのに」
と本音のような質問が口から出てしまった。
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時