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車を走らせて10分程、銀座駅前で珍しくちゃんと待っていたAを拾って集荷場へ向かった。
1億円を宝石に換えた経緯を説明すればAは「頭いいなぁ青池透子」と他人事のように感嘆を漏らした。
感心する場合か。そう突っ込みたい衝動を抑えて車を走らせると、あっという間に集荷場へ着いた。
「ガールズインターナショナル宛の荷物で、送り主は青池透子か別の名前か…」
「あぁ今日の！よく覚えてます」
平日といえどたくさんの人が訪れるであろう場所なのに、1人の女性が印象に残っているとは、どういうことだろうか。
「いやーなんか凄い楽しそう……っていうか嬉しそうで…？
とにかくかなり興奮してて…」
うさぎのぬいぐるみは19時のフライトに間に合うように運ばれたらしく、青池の思惑通り、警察にも暴力団にも1億円を取られることなく今は空の上だ。
してやられたな。青池透子の方が1枚上手だったようだ。
「やっぱ頭良かったですね、青池透子さん」
のんきに聞こえたその一言に「だから、感心することじゃない」と反論しようとした。
だが、夜空を見上げながら悲しげに微笑む彼女の横顔を見て、開きかけた口を閉じて違う言葉を探した。
「……あぁ、そうだな」
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通常任務に戻るよう言われ、志摩さんの運転でパトロールをしていたのだが時間が過ぎるのが、いつも以上に長く感じられた。昨日1日の内容が濃かった、濃すぎたから仕方ないのだけれど。
「“相手の本性を知るには生死が掛かった瞬間を見ると良い”」
伊吹さんがダッシュボードに置かれたウサギを見ながらそう呟いた。
そういえばPCショップの張り込みで言ってたな、なんて思い出す。
「お前の本性が死にたい奴だったとはなぁ…」
「昼間のやつのことまだ言ってんの？何でもねぇよ。ハッタリかましただけだ。
無い頭で深く考えんな」
今の言い方だと“これ以上踏み込むな”と聞こえる。
無い頭でも、深く考えなくてもわかる。
過去に何もない刑事なんていないと思うけど、志摩さんの場合、根深い闇を抱えているように見えて仕方がない
……志摩さんの髪の毛くらいにふんわりした臆測だけど。
「あんな真似、二度とすんじゃねぇぞ」
すると、志摩さんはハンドルに顔を伏せると「……合点承知之助」と笑った。
〜第4話 ミリオンダラーガール 完〜
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作者名：古町小町 | 作成日時：2020年10月14日 21時
