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ータッタッタッという軽い足音が聞こえてなんだろうと思い、音のした階段へ向かうと
「わっ!?志摩さん…すみません」
「いや、こっちこそ悪い」
慌てた様子のAと結構な勢いでぶつかった。
その眼には今にも溢れそうな程涙がため込まれていたが、すぐさま立ち去られてしまい何も聞けなかった。…この階段を上った先は屋上だ。なにがあったのだろうか。
気になって様子を見に行くと、ベンチで座って何かを飲んでいる隊長の姿があった。
「メロンジュース…」
「あぁ…ふふっ…404見てたら飲みたくなった」
隊長は少し照れ臭そうに笑いながら、ベンチの上に置かれていた資料をどかした。その厚意に甘えて隣に腰掛ける。
「Aどうしたんですか」
「あー、さっきちょっと話してたの。2年前の」
そういえばAは裏カジノ事件に関与してたのか。前に調べたことを思い出した。
「2年前に青池を助けた。羽野麦を危険に晒して…
なのにハムちゃんは未だに籠の鳥で、青池透子は誰にも助けを求めずに死んだ」
「青池の最後のツイート」
「あぁ、恨み言みたいだったね。
彼女が最後に見た景色は絶望だった」
“最後に一つだけ”
“わたしが助ける”
“自由になれる”
“そんなの嘘だ”
“逃げられない何もできない”
“弱くてちっぼけな小さな女の子”
“誰が決めたの”
“つまらない人生”
“もう死ぬみたい”
「私たちはいっつも間に合わない…
なんてぼやいてしまった」
彼女の弱音なんて聞くことがないから、かける言葉が見つからずにいると
「あれ、伊吹何してんの?声掛けなさいよ」
隊長の視線の先にはニヤニヤした伊吹がいて、俺は思わず立ち上がった。
さっきまで自分の席について大人しくしていたのに。
「伊吹、空気を読みました」
「お前は空気が読めたのか…なんで余計な時だけ読むのか」
「なんか志摩の例のそうゆう匂いがしたからさ」
「なんだ例のそうゆう匂いって!!」
「そんなことよりさ、
青池はどうやって1億円持ち出したと思う?現金持って出国は出来ないのに外貨預金する訳でもなく貯め込んで…」
「あああ!!!!」
突然伊吹が叫んだかと思えばくしゃくしゃにシワのついた紙をポケットから取り出した。
「忘れる所だった!!
いとまきまきから青池ちゃんのスマホのマップデータからこの宝石店に通ってたって…」
「……Aを呼んでそこ行くぞ」
「あぁ、あの子、今は一人にしてあげて」
「「??」」
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月14日 21時