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大きくてポップな車体なためバレないように遠くから追う。と、4つの陰が自販機に照らされて見えた。

「…伊吹のやつ逃げられたらしいな」

右隣から笑いを堪えるような声が聞こえる。この状況をどうやら楽しんでるみたいだ。
目を据えて自販機の前をよく見ると、同じジャージを着た男が4人いた。


「虚偽通報の犯人はあの4人と通報者の女性1人…
 少なくとも5人ですね。
 あと、若い……高校生くらい?」
「そうだな」

男の子達が去ったのを確認して自販機に駆け寄る。

「お、ラッキー」

幸運なことに、この自販機は見守り機能付きだ。
逆にあの子達が気の毒に思えてくる。こんな凡ミスで正体が明かされるのだから。

「よし、戻るか」
「はい」





確認を終えて公園の入り口に戻ってくると、さっきまであんなに息巻いていたのに、今では子供のように小さく蹲る伊吹さんが一人で寂しそうに座っていた。

「あっれ〜?
 伊吹刑事お一人ですかあ〜?」

志摩さんは窓を開けてワザとらしく声をかける。
2人とも子供みたい。

「どこ行ってたんだよ」
「確かさっきは余裕で捕まえるとか何とか言ってましたけども〜…?」

まあ口が回ること。伊吹さんがさらに小さくなっていく。この人鬼だ。優しくない。

「加々見の時志摩さんもじゃないですか…イテっ!」

独り言のようにつぶやいたのに拾われて、頭を小突かれた。
後頭部を穴が開くほどに睨みつけてやる。私の脳細胞この1か月でだいぶ減ったと思う、パーマ野郎のせいで。


「あれインチキだもん。
 あんなん早すぎる。
 ウサイン・ボルトだって勝てないもん」

語尾に“もん”をつけてとうとう本格的にいじけ出した。走り負けたことが相当ショックだったのか、口答えするというよりは弁解する言葉を探している。


「相手が世界記録保持者だったのか?」
「違う!そんな人がこんな所にいるはずないじゃん!」
「どっちだよ」
「…ウサイン・ボルトだってリレーには勝てない。」
「はいはい。言い訳は戻ってから聞こうか。」


助手席を譲って後ろに動こうとしたら、志摩さんに「そのまんまでいーよ」と止められた。ショックで1人になりたい気分らしい。


「志摩さんがいじめるからですよ」
「いや、面白かったから」
「確かに…あ、すみません」
「Aちゃんまで!!」


もう失言しないように帰り道は黙る事にした。




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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時

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