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しかし、いつまで経っても発砲音は聞こえず、代わりに

《翔け空に チェンジアンドソウル!!》

女の子の甲高くて可愛い声と"キラーン"というオモチャの機械音が聞こえた。
思わず「へっ…?」と私の口からは間抜けな声が漏れてしまう。
もちろん伊吹さんの手に握られていたのは拳銃ではなかった。おもちゃのステッキだ。多分あのおばあちゃんが探しているやつ。


「だから!懲りたって言ったじゃん!」


伊吹さんはいつもの軽い調子に戻っており、私もその姿に強張っていた力を抜いた。
頭が正常に機能し出したとき、沸々と怒りが湧いてきた。殴りたい。


「もう銃は抜かないよ、
 どうせ撃ったって当たんないしね。
 だったら走ってとっ捕まえて殴った方が早いよ。」


その調子を見て志摩さんの怒りメータは120%になったらしく、伊吹さんの胸ぐらを掴むと思い切り殴った。
と、目を離した隙に犯人が逃げ出そうとしたため私はすぐに抑え込む。
時計を見るとちょうど9時だった。ぎりぎりだったな。
ポケットから手錠を取り出して犯人にかける。


「午前9時、
 公務執行妨害、道交法違反、傷害に器物破損にその他色々…で逮捕します。」

一息ついてから怒りを顕にしている志摩さんと、殴られて呆然としている伊吹さんを交互に見る。


「志摩さん…
 お気持ちは察しますが、殴る前に捕らえましょう」
「はい」

「伊吹さんも馬鹿な真似はやめて下さい」
「わぁ、意外とAちゃんSだね!」


反省の色が見えない伊吹さんの発言は無視することに決めた。





_______

____________






犯人を無事捕らえることができて分駐所に戻る。
怪我をした場所の手当てを済ませて椅子に座っていると、笑顔が引きつっている隊長に呼ばれ、4機捜の5人で隊長室に入って行った。

なぜひきつっているのか、心当たりがありすぎて怖い。

勤務初日で機捜車を廃車にしたのだから怒るのも当然だ。
私は覚悟を決めて、でも一番最後に隊長室へ入った。


「1日お疲れ様でした。」

ペコっと一礼する。

「警察庁が道交法を改正して新しく煽り運転罪が作られることになりました。摘発されれば1発で免許取り消し、懲役刑も有り得る。施行されるまで現在の法制度に乗っ取って安全に留意して、対応してください」

意外にも怒られることなく、これで終わりかと思って戻ろうとしたが「待ちなさい」と隊長に引き止められる。

冷や汗がだらだらと止まらない感じがしてきた。



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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時

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