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程よく伊吹さんから距離を取ると、話を戻そうと続けた。
「で、伊吹さんはなぜあの車だと思ったんですか?」
伊吹さんは私とは違って確信を持ったように言っていた。何か感じることがあったのだろう。
「んー、なんかずっと引っかかってて」
「俺たちは映像で見ただけ。犯人の車を直接見てない。」
「なんだろう……なんか感覚……?なんだろうな。なんかこの辺にもやもやーっと……」
「勘とか感覚とかやめてくんないか」
さすがに志摩さんの怒りメーターは溜まったらしく声を少し張り上げ、伊吹さんを指さした。イラついてるのが目に見えてわかる。
すると、伊吹さんはその手を掴み、目を閉じて何か考え始めた。
さっきとは違って真剣な表情に、みんな黙って伊吹さんの言葉を待った。
「あぁ、
スッキリした…エンジン音が同じだ。
おもちゃ屋の前で見た時、多摩の…」
「「多摩 300 し 12-15 」」
「2人とも息ピッタリ!
よし!じゃあそのナンバーで緊急配備!」
「待て待て!!」
「百歩譲って犯人の車を見たとして、多摩ナンバーの車はエンジン音が似てたってだけだ。」
「同じだよ。また違うナンバーに変える前に緊急配備で捕まえないと……」
「別人だったらどうするんだ」
「俺の耳は正しい。」
「緊急配備までして間違いだったじゃ済まないんだよ!!」
志摩さんが声を荒げたと思えば、ガコンッ!!と、強くゴミ箱を蹴り上げた。その衝撃で近くにあった色んな紙類や物がバラバラと落ちる。冷静な人だと思ってたけどそうでもないらしい。
「俺たち警察は権力を持っているからこそ慎重に捜査しなければならない。そのための規則、そのための捜査手続きだ!奥多摩の交番から来た素人が野生の勘だけでしゃしゃってんじゃねぇよ!!」
伊吹さんに近づきながら志摩さんは怒鳴り散らすが、急に我に帰ったように「俺までマウント取っちゃったじゃないか!!!」と壁に頭をぶつけた。
「なんだかテンション上がってきたー!!!ねぇっ!?」
この状況でテンション上がってるのは伊吹さんだけですよ。
そんなことは置いといて、今何をするべきか考える。
「今の状況で緊急配備は無理ですよ」
「じゃあどうする?」
「やるなら…ルール内でやる。
班長どうしますか」
班長の陣馬さんに視線をやると二つ返事で承諾を貰った。
「隊長に1報入れて当番勤務が終わる朝9:00まで俺たちだけで捜索にあたる。
ただし!他の事件が入ってきたらそっちを優先!」
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作者名:古町小町 | 作成日時:2020年10月12日 0時