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jr.
掃除もあらかた終わり、使った道具の片付けを俺が請け負い、慎太郎には先に共有ルームに行くよう伝えた。
道具を片付け終えて、俺もみんなの元へ行くと、なぜか慎太郎がいなかった。
｢あれ、慎太郎は？｣
｢ああ、彼奴ならチャッカマンが使えないから、
さっき近所の店まで買いに行ったよ。
そこに置いてあった樹の車の鍵、勝手に使ってくって｣
坊っちゃんには困ったもんだよ、なんて言う高地の声は流れていった。
.
慎太郎が、あの車に？
そう理解した途端、俺はとんでもない事をしてしまったと思った。
だって、あの車は、
北斗が事故にでもなればって、
それで、
俺が細工して、
それで、
それで、
それ以上は、脳が考えることを拒絶した。
もし、慎太郎が事故にあったら、？
ﾊｸ、と声にならない声が、漏れた。
やめて、
神様、
俺が悪かったから、どうか、
慎太郎が無事で帰ってきますように。
どうか、
どうか……
.
.
俺の願いも虚しく、
慎太郎は事故にあった。
鼻の奥がツンとして、
目にはうっすらと涙の膜ができていた。
隣にいたきょもが、
そっと俺の肩を抱いてくれた。
その腕の中で、俺は、
取り返しのつかないことをしてしまったと、
恐怖に支配されていた。
｢樹、落ち着いて……
今から電車で病院に行くって。準備しよう？｣
ね？きっと大丈夫だから。
と、俺をあやすように声をかけてくれたきょもに支えられながら、なんとか足を動かした。
.
.
隣を歩くきょもの顔は、暗くて見えなかった。
.
.
｢……ふふっ｣
喜びを噛み締めるかのように、
小さく笑っていた人がいたなんて、
その時は気づきもしなかった。
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作者名：鈴森。 | 作成日時：2020年10月30日 1時
