【短編集】君の傍に[実況者]

31- それでも貴女が＿鬱大先生 ページ31

貴方はいつもそう。



都合のいい言葉を並べて、さも本当に私を好きと思っているかのような口ぶりで事を丸く収める





何度浮気されたって、何度目の前で女の子をナンパされたって、



何度これで最後だからと言ったって。





鬱「…？Aちゃんどうしたん？」



　「別になんでもない」


鬱「うーん…そんな丸っきりな嘘言われてもなあ、何かあったんやろ？」




　「……」



二人きりの部屋で顔を近づけられ、私は目を逸らした。



私があと少し顔を動かせば彼の口に触れてしまうような距離に、息をすることさえ少し遠慮をしてしまう



鬱「俺には何でも話してや」




優しい声。甘い言葉。




騙されるのはもう沢山。



　「…ね、別れて」




鬱「……、は…？え、な、なんでなん？」





一瞬理解が遅れた彼は未だ訳が分からないといった表情で私の肩を掴み詰め寄った


『なんで』なんて、自分が一番よく分かっているはずでしょう。


冷たくそう言い放てば、彼は先程よりかは少し落ち着いて、でも何処か悲しそうに目を伏せた




鬱「そっか…」



呟いた彼の顔は俯いていることによってどんな表情をしているのか確認は出来ない



私も、その場の沈黙に耐えられずふと視線を横に逸らした



丁度よく目に止まった私達の写真は、
本当に幸せそうに笑っていて、余計な事をしたと自嘲を零しながら今度は素直に下を向いた







鬱「…わかった、でもその前にさ、Aのホンマの心が聞きたい」


　「え…」



鬱「俺の事、好きやった？」





いつもとはかけ離れた、弱々しい力で握られた手と不安げに揺れる瞳に捕まえられ
私は言葉に詰まりながらも彼の目からは逸らせなかった









　「…浮気して、何度も私だけって言って
また浮気して、正直どうしようもない人だなって思ってる」



鬱「っ…」



　「でも、」







それでも








　「でもね…好き、好きなんだよ」





どんなに憎んだって、貴方との写真(思い出)を捨てられないの。






鬱「っ、やっときけた、Aの本心」





貴方は狡い。



拒絶すると決めたはずの温もりも、関係も、貴方への想いも



溢れ出してしまえば拒めないじゃないか。





　「っ、好き、世界で一番好き…自分より貴方の方が好き」





鬱「うん…いっぱい、傷つけてごめんな、
俺だってAのこと好きやで」






重くならないように、ずっと心に留めていた想い


でも貴方もそうだった、一緒だった。




痛い程に抱き締められているのが、何よりの証拠

＿＿
スランプ中

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