【短編集】君の傍に[実況者]

24- 作られた孤立無援＿ロボロ ページ24

ロ「トントン、入るでー」


ト「おー、どないしたん？」




ロ「あの子堕ちたでー」



疲れたーとトントンの部屋に置かれている簡易なソファーに勢いよく座ると
ぼふっと空気の抜ける音がした

ト「あー、ロボロの言ってたあの子か
教えたらすんなり堕ちた？」



ロ「おん、でもそれまでホンマ頑張ってたで」




この日の為にどれだけ手をまわしたか
彼女の周りには今までどんな人がいたのか、今までどんな所に赴いてきたか
今までどんな経験を得てきたのか


できる限り全て調べつくした

どこの国の者かなんて本当は最初の段階から知っていた









外交官のオスマンに頼んでAの国へ書状を送り付けもした

過去を調べていてわかっていたが流石大切にされていなかっただけある




コイツを送り付けてきたということは宣戦布告と捉える、と伝えると
そんな者はうちの軍にはいないだとさ



まあ多方面から調べ尽くせば、自分に役立つものしかいらないという考えの持ち主なのは
知っていたから予想通りといえばそうだったんだけど



ト「ホンマ、今回ばかりは俺はお前が怖かったわ」





トントンが呆れたように肩を竦めそう言った





凍りついた瞳を自分の色に染めてみたいが為
まさかここまでするとは自分でも驚いた


こんなことをしてまで誰かを手に入れたいと思ったのは初めてだった









彼女の周りから人をなくして、

逃げ場所は俺たちだと


独りぼっちに次の居場所はここだと教えてやるのは結構簡単なことだ






しかも彼女自身、十分な愛情を与えられなかったせいで愛されたいときっと誰よりも望んでいる


ならば現状になるのは必然ともいえた








ロ「グルッペンも文句ないんやろ？」



ト「おう、寧ろロボロがそこまで執着する奴が気になるってよう牢に行こうとしてたけどな」



疲れたと言わんばかりの表情が
お前が行って何かあったらどうすんねん、と怒鳴りながらグルッペンを引き摺っているのがありありと目に浮かぶようだった








ロ「他の奴も特に問題なし？」



ト「やろうなあ…あの子の情報教えたら興味津々なやつばっかやったわ
特にゾム」


ロ「まあ同業やしな」







もう外は日が沈み始めている



明日になればこの城を彼女と一緒に歩ける

これから先は自分の傍に彼女が居続けるんだ






そう思えば自然と頬が緩んだ





ロ「A、これからは俺が守ったるから」



彼女の冷たい手に握られた手をそっと触れた

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