【短編集】君の傍に[実況者]

18- 雪が＿エーミール ちぃ汰リクエスト ページ18

エ「こんにちは、何かお探しですか？」

　「あ、こんにちは」


私は彼への返事に躊躇った

雪の寒さから逃れるように立ち寄った少しレトロな図書館
目的があった訳じゃなかった



エ「良ければ、私のオススメをお貸ししましょうか？」


返事に困っている私に彼の方からそう言葉を掛けてくれた
別に本を読むことも興味無い、という訳では無いので喜んでその言葉に頷いた


　「エーミールさんはここで働いてらっしゃるんですか？」


エ「ええ、ここの管理をさせていただいています」


　「そうなんですか」


丁寧な言葉、一つ一つの洗礼された動作
見ているだけで清々しいほどの優しい微笑み方

まるで自分がどこかの貴族の人になったかのような錯覚まで覚えるほどに
彼は慎ましく私に一つ一つ教えてくれた




　「あ…もうこんな時間」



本のことを聞いたり、彼と他愛もない話をしていればあっという間に時間がきてしまった
名残惜しさはあるものの、閉館時間だってあるだろうしこの後夜からバイトが入っている


話していたいのは山々だが行かなくてはならない




エ「…Aさんは
雨が止みませんね、の意味を知っていますか？」


　「あ、はい。知ってますよ
月が綺麗ですねの部類でよく使われますよね」



エ「ええ、そうです。
では、雪がやみませんね、の意味は知っていますか？」




　「いえ…それは初めて聞きました
どんな意味なんですか？」



優しく微笑みを絶やさない彼の表情に
小さく高鳴りを上げ始めた胸に気付かないふりをして、私は会話を続けようとそう尋ねた。






エ「意味は、『貴方への想いが止まらない』」


　「！」




ただ真っ直ぐ。先程とは打って変わり私の目を見つめる彼はとても真剣で。



まるで
私に向けて言っているような気がする程



何も言えず見つめ合うように固まる私を見て、ふっと彼は表情を戻して





エ「…また、貴方さえ良ければ来てください
今日はとても楽しかったです」




　「は、はい…
私こそ、今日はありがとうございました」



微笑む彼に見送られて私はそのまま図書館を後にした



さっきのは一体？
というかあの意味を私に伝えたのは何故？

グルグルと考えれば考えるほどわからなくなる




雪はまだ降っている



体は寒いはずなのに、
顔はこれ以上ないほど熱くなっていた



＿＿
雪が止みませんね＝貴方への想いがとまらない
＿＿

ちぃ汰リクエストありがとう！
冬をモチーフって言ってたのに全然要素がなかった気がする…こんな感じになっちゃったけど、また良ければリクエスト下さい！！

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