[短編集]色んな愛[実況者][完結]

38　引換薬＿フジ ページ40

買い物の為、街を歩いていると








見慣れぬ細い路地を見つけた。









目を凝らして先をみてみると優しそうなおばあさんが座っている。









よく怪しい商売をやってる人とかがいそうな雰囲気の場所に長机だったけど









何故かそのおばあさんがすごく気になった。









気づけば、私は吸い込まれるようにその路地裏へと足を運んでいたんだ。









　「おや…』









おばあさんは私が近付いてきたことに驚いたようだったが




私をまじまじと数秒見つめたあと、









「あなた、そう…とても大事なものね。







それを無くしかけているんじゃないかしら』









　「！どうして…」









おばあさんが発した言葉が図星すぎて




私は言葉が詰まる。









見ず知らずの、今知ったばかりの人に





自分の今、最大の悩みを言い当てられれば誰だって驚くだろう









　「ふふ、やっぱりね…



私、大抵のことはわかるのよ？





そんなあなたに、特別。これを無料であげるわ』









そう言っておばあさんが机の中から取り出した物は



小さな小瓶。









小瓶の中には透明な、でもどこか不思議な空気を宿した水が入っている。









　「これは…」









　「それは引換薬。








あなたの願い、想い、なんでもいいわ。





その小瓶を夜握りしめながら、あなたの今一番願いたいことを願うの。









そして次の日その中の水を相手に飲ませる。







例えば好きな人と両想いになりたい、と願うなら

好きな人に願いの籠ったその水を飲ませるということ』









その説明に喉がコクンと鳴った。








これがもし本当なら、フジを助けられる。









私は期待に満ちた目で小瓶を見つめた。








そんな夢心地で私がいた時おばあさんが、ただし、と否定的な言葉を発し








ハッと我へとかえる。









　「その願いに相応の代償を支払うことになるよ。







お金で済む願いであったり、









お金なんかじゃ済まない願いもある』









そこでおばあさんは私を見つめ









　「特に、人の命を救いたい場合は









自分の命を失くす覚悟でないと』








ドクンと勢いよくはねた心臓に知らないふりをして
私は、全てを見透かされた瞳を見つめ返した。

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