社畜ちゃん(sgi)

. ページ37

怒涛の一週間で落ちた体重が戻ったころ、に商品サンプルが届いた。僅かな修正はあれど、ほぼほぼ初期案のままだ。実際パソコンの中にあったデザインが商品となって手元にくる瞬間は他の誰にも味わうことのできない快感だろう。商品を手にしたら感動で涙が出ると思ったのに、意外と安堵のほうが強くて気が抜ける。


「すげ〜売りモンみたいっすね」
「売り物だからね」


漫才をしている、こうちゃんと河村さんに笑ってしまう。
喜びもつかの間、商品の写真撮影をしなくてはならない。3サイズ展開のため山本くん、伊沢さん、須貝さんの3人を順番にヘアメイクをする。


「Aさん、頑張ったねすごいね、めちゃいい感じじゃん」
「私もそう思う」
「僕3着買うよ！」
「そんないる？」


山本くんが嬉しそうに言うから、少し照れてしまう。けど、私も自信あるものができたからよかった。


「どれぐらい買ってくれるかな」
「どうでしょうね、値段設定とかはよく分からないので福良さんにお任せしてますし」
「俺3着買おうかな」
「山本くんも3着買うって言ってました」


伊沢さんも心配そうに言ったものの、どこか満足した表情をしていたので安心する。私がメイクするのに慣れたように、彼らもまたメイクされるのに慣れてきていて、顔の向きだったり目を閉じるタイミングは完璧で阿吽の呼吸だった。


「よし、伊沢さん終わり」
「ありがと。須貝さん、だいぶAが足りてなさそうだからちょっと喋ってあげてね」
「足り、え？どういう意味ですかそれ、ちょっと、ねぇ」


呼び留めても伊沢さんはニコニコするだけで説明なんてしてくれない。伊沢さんの言葉が聞こえていたのか、ばつが悪そうに須貝さんが私の近くまで来て謝りながら目の前の椅子に座る。謝らなくてもいいから、足りないってどういう意味か説明してほしいです。ちょっとだけ良いように捉えてしまうから。

15.5→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す