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朝ご飯はお洒落で静かなカフェだった。柔らかいコーヒーの匂いに、パンの美味しそうな香りもふんわりとする。店内のデザインをくまなく見てしまうのは学生からの癖で、直りそうもない。
朝といっても、既にもう10時になろうとしていて、あと1時間もすれば古着屋さんはチラホラと開き始める。
「Aちゃん、可愛い格好ね」
「さっき聞きました」
「言ったからねぇ」
珈琲を啜る須貝さんも、いつもより随分フォーマルな格好をしていてカッコ良かった。身長のおかげでシンプルな服が映える。
時間になれば私達は古着屋さんに向かう。トイレに行っている間にまたもや支払いは済まされていてカレーこそはと強く思う。今日は「可愛い子ちゃん割引でタダだった」とバレバレの嘘をいう須貝さんは女の子慣れしすぎてはないかと穿ってしまう。それとも関西の方特有のボケなのだろうか。
立ち寄った古着屋ではメンズの服を片っ端から漁る。専門用語で言えばディグりまくった。須貝さんも、私に合いそうな服を持ってきてくれたりしてくれて、山本くんと古着屋さんを歩いた時より格段にデートみが深かった。デートみとは。
「コーデュロイのノーカラーシャツ可愛いですこれ。ベージュの」
「このロゴトレーナーも可愛い」
「あのブラウンのトレーナーとかあるといいです。寒くなったら、こんな感じの白いタートル着たら最高」
「待って、須貝さんスラックスとか絶対似合うじゃないですか」
「頼むから、これと…あとそれも試着してください」
片っ端から似合いそうなもの全て押しつけて無理矢理試着させる。側から見たら私は押し売り店員のようなのだろう。私が選んだ服を着る須貝さんはめちゃくちゃ格好よくて、心臓が爆発しそうだった。
気づけば古着屋に小一時間以上いて、須貝さんの両手にも私の両手にも古着が抱え込まれていて2人で顔を見合わせて笑った。
ずっと食べたいと思ってたカレー屋にも足を運べたし大変満足だった。もうそろそろ夕方になろうとしている。そこで須貝さんのスマホが変な着メロを鳴らす。
「伊沢だ、なんかあったっけ。もしもし」
何も悪いことはしていないけれど、少しドキドキする。警察とすれ違うときのソレみたいな。須貝さんがチラチラとこちらを見るから余計に緊張した。
「んじゃ、連れてくわ、またあとで」
電話の向こうにいる伊沢さん相手にあとで、と告げたということは須貝さんはオフィスに行くのだろうか。
「Aちゃん、今から歓迎会だって。行こうね」
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月華(プロフ) - 初めまして。月華と申します。いつも更新を楽しみにしています。これからまた山本さんもなんとなく加わって、関係性がどうなっていくのか?楽しみにしています。 (2020年9月7日 22時) (レス) id: 7021cebe65 (このIDを非表示/違反報告)
かもめ(プロフ) - 亜杞さん» わーん!誤字!ご指摘ありがとうございます、気を付けます。 (2020年9月3日 2時) (レス) id: 87fffe4b37 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - 初コメント失礼します。“4”の中の言葉で“誘いそう”が“誘いさう”になってしまってます。素敵な文章ゆえに気になってしまって。。。今後も更新されるのを楽しみにしています。失礼しました。 (2020年9月3日 1時) (レス) id: 4b3f3a4234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かもめ | 作成日時:2020年8月26日 19時