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午後の撮影も順調に進み、定時になる。
今日は特に残業するようなものもなかったため挨拶を済まして帰宅しようとするが、いきなり開いたドアによって遮られる。
「ギリセーフ?いるか?いるな?」
キョロキョロと見渡しながらそう言うのは須貝さんだった。
一度オフィスに来て、学校行って、またオフィスに来たのか。駒場からここまでは30分以上かかるのによくやるな。よっぽど大事な何かがあったのだろうと思ったのに、須貝さんは帰宅準備万端の私の手首を掴む。いるか?ってのは私がってことか。
「それじゃお疲れ様!」
と元気な声で言うのは私に向かってではなくて、まだオフィスにいる人たち。私は須貝さんに連行されたのだった。
「夕飯まだでしょ?食いながらデートどこいくか決めよ」
「え…いいですけど」
「いやぁラインでもいいんだけど、後でやっぱ無理!って言われたくないし」
「言いませんよ、そんなこと」
「ほんとに〜?まぁいいや、何食べたい?」
何でもいいと言った後に、うわこれ何か言ったほうがよかったやつだと反省する。それでも須貝さんは簡単にお店を決めていてさすがだなと思う。
結構ガヤついた居酒屋だけど、二人きりというのを誤魔化せて心地よい。そんな配慮から大人っぽさを感じる。ビールを一口飲めば、疲れた身体に染み渡る。明日も仕事なのでそんなには飲めないが、まだ定時すぎて間もないのでいつもよりは飲めそう。4,5個ほど適当に頼んだオツマミをちょっとずつ食べ進める。
「どっか行きたいところあるんですか?」
「えっ、山本と行ってた古着屋さん行きたい」
「下北沢ですね、須貝さん家近いんじゃないですか」
「駒場から二駅だしね」
「じゃあお昼はカレーの惑星行きましょ」
「俺ら宇宙旅行すんの」
「そういう店名ですから」
気になってたカレー屋さんにも大好きな古着屋さんにも行けることが嬉しくて、ついつい酒が進んでしまう。オツマミもお酒も追加する。
「須貝さんって身長いくつなの」
「180ぐらい」
「そういう人って大体ギリ180ないでしょ」
「うるさいなぁ、Aちゃんは酒飲むと陽気になるタイプかぁ」
今なら箸が転がっても笑うんだろう。私は記憶はしっかり残るタイプなので後に須貝さん相手にタメ口叩くのをめちゃくちゃ反省することになることまで分かってはいるのに、何故かお酒を飲んでしまうと気が大きくなってしまう。陽気と言い換えてくれる須貝さんは優しい。
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月華(プロフ) - 初めまして。月華と申します。いつも更新を楽しみにしています。これからまた山本さんもなんとなく加わって、関係性がどうなっていくのか?楽しみにしています。 (2020年9月7日 22時) (レス) id: 7021cebe65 (このIDを非表示/違反報告)
かもめ(プロフ) - 亜杞さん» わーん!誤字!ご指摘ありがとうございます、気を付けます。 (2020年9月3日 2時) (レス) id: 87fffe4b37 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - 初コメント失礼します。“4”の中の言葉で“誘いそう”が“誘いさう”になってしまってます。素敵な文章ゆえに気になってしまって。。。今後も更新されるのを楽しみにしています。失礼しました。 (2020年9月3日 1時) (レス) id: 4b3f3a4234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かもめ | 作成日時:2020年8月26日 19時