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「須貝さん、いいんですか」
「いーよ、別に顔貸すだけでしょ」
「…やっぱやだとか言い出さないでくださいよ!」
須貝さんには申し訳ないけど、実験台になってもらった。何もしてない状態、CCクリームだけ、BBクリームだけ、下地とファンデーション。
それとポイントメイクはとにかく時間がかかった、眉だけ、コントゥアの有無など。
髪型も時間がかかった。今まで中高の体育祭等では友達の髪の毛をアレンジしまくってはいたが、男の人の短髪は初めてだった。アイロンをしてみたり、ワックスをつけてみたり。
全ての状態を写真に残す。資料としてパワポに載せても良いか聞けば、須貝さんは好きにしてくれと言わんばかりに親指を立てる。だいぶお疲れのようだった、ラーメンとチャーハン奢りますからね。
お化粧は絵を描くことに近いけど、ヘアアレンジは粘土の授業に近いななんて思った。冷静になれば全然そんなことなんてないけど。十分資料が集まったところで須貝さんに化粧落としを渡す。
「すみません、たくさんの時間貰ってしまって」
「いや全然、むしろ新鮮だった」
「須貝さんはぶっちゃけヘアメイクどう思います」
「ん〜まぁ俺自身は必要性は感じてないけど、そうしていかなきゃいけないってのも分かる」
「ってか、Aちゃん毎日こんな面倒なお化粧してんの、尊敬しちゃうわ〜」
「は〜女の子って大変なのね…??」
なんだか女性的な口調の須貝さんは面白くて、いつも私がやっているようなガッツリお化粧してやろうかなんて思ってしまう。
明日の会議に向けてパワポを最終調整する。きっと上手くいきますように。できるできる、と浪人時代から御守り代わりの白のアクリルガナッシュを握りしめる。
当日の会議では真っ先に手をあげる。とにかく早く喋り切ってしまいたいのと、多くの意見が欲しかったから。考えを少しずつ分かりやすく簡潔に喋る。
「ファンデを塗れば綺麗な肌になるけど、そこまでする必要はないんじゃないかと」
「クマを綺麗にするだけで若々しく元気に見えるし、眉毛を整えるだけで清潔感も増してませんか」
「特に髪の毛はセットするとしないで第一印象が変わってきます」
「多くの人の目に触れるには、100人見たら100人に清潔感があると思ってもらう必要があるんです」
結果的には1ヶ月間お試しで行うことに落ち着いた。私頑張ります、乗り気じゃない皆さんに半ば無理やり押し付けたので。結果で勝負させてくださいと頭を下げたのだから、やるしかない。
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月華(プロフ) - 初めまして。月華と申します。いつも更新を楽しみにしています。これからまた山本さんもなんとなく加わって、関係性がどうなっていくのか?楽しみにしています。 (2020年9月7日 22時) (レス) id: 7021cebe65 (このIDを非表示/違反報告)
かもめ(プロフ) - 亜杞さん» わーん!誤字!ご指摘ありがとうございます、気を付けます。 (2020年9月3日 2時) (レス) id: 87fffe4b37 (このIDを非表示/違反報告)
亜杞(プロフ) - 初コメント失礼します。“4”の中の言葉で“誘いそう”が“誘いさう”になってしまってます。素敵な文章ゆえに気になってしまって。。。今後も更新されるのを楽しみにしています。失礼しました。 (2020年9月3日 1時) (レス) id: 4b3f3a4234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かもめ | 作成日時:2020年8月26日 19時