短編集【QK】 (ページ15)

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風水_wtnb ページ15

僕の好きな人がそれはそれは一眼でわかるほどのイメチェンをしてきた。胸まであった髪の毛をハンサムショートと言うのか、肩より上とかそのレベルではないところまでバッサリと切っていた。なんなら刈りあがってる気さえする。河村さんの方が髪の毛長いんじゃないの！
ただ彼女は可愛らしいと言うよりは綺麗な顔つきなので中性的な髪型がとても似合う。ショートにしたことで、おおぶりのピアスが映える。

じゃなくてさぁ！

なんでいきなりそんなに髪の毛を切ったの。20センチ、いや30センチは完全にいってる。
今時失恋で髪の毛を切る人なんていないだろう、わかってる。けどやっぱりそうなんじゃないかって思ってしまう。だってすごい振り幅だもん。完全に今までと系統違うんだもん。美人だったのがさらに美人になっちゃってるんだもん。
大事そうに髪の毛もケアしてたし、綺麗な髪の毛だったのに切ってしまうのは、彼女にとって勇気がいることだったのではないか。

「Aさん、髪の毛、いい感じ」
「ん、そう？ありがとう、ちょっとイメチェンしすぎかなって思って不安だったから嬉しい」
「…も、もしかして」
「うん？」
「失恋…とか…？」

彼女はキョトンとする。そして少しだけ考え込んだ表情。失恋だとしたら何の関係があるんだとでも思われてるのかもしれない。失礼なこと聞いてしまったよなぁ、もしかしたらセクハラになるのかなぁ。だとしたら申し訳なさすぎる、そんなつもりありませんですます。
どうにかして、そんなつもりじゃないんだと自分の考えを言おうにも、俺は説明が下手くそだから絶対伝わらない。しかも、ほんの少しではあるけど失恋ならいいのにって思ってる自分もいるから何故自分が失恋かどうか聞いたのかを喋ろうものなら、それこそ絶対にボロが出て爆死コースに決まってる。それだけは避けねばならない。とりあえず先程の発言を取り消そうとすれば彼女は口を開く。

「こうちゃんって私のこと嫌いだっけ？」
「え？！そんなわけないじゃん！」

変なことを言う彼女の言うことを慌てて、半ば被り気味で否定した。
彼女は手を口元に持ってきてクスリと笑う、その姿が好き。彼女には品があって、まっすぐで、とにかく綺麗な人なんだ。
と思えば、彼女は見たことない表情をして俺に言う。

「じゃあまだ失恋してないかなぁ」

ここで俺は気づいた。彼女は意外と品のある微笑みよりも、何かを企んだような片方の口角をあげたような笑みの方が何億倍も綺麗だってことに。