第３０話 思想と結論 ページ43
「…………」
目を開けるとまたこの世界……退屈で残酷なこの世界……
私は重い体をベッドから起こした
「……母さん…」
あんな夢を見たのは…たぶんクローリーに身の上話なんかしたからだ
……他人に話したことなんてなかったのに……
ましてや、私をこんな醜い化け物にした男に……私を“誰か”の代わりにしている男に……
「……クローリー……」
そう言えば、クローリーは何処に行ったんだ
寝ている間に出ていったのか？
外を見ると、眩しい程の夕陽が射し込んできている
私は体勢を変え、ベッドに腰掛ける形で窓の外を眺めた
……眩しい太陽……
紫外線除去装置がなければ、吸血鬼は生まれてきたことを後悔するような苦しみと共に燃え尽きる
そして人間は吸血鬼が太陽に弱いことも認識している
しかし、人間は吸血鬼を太陽で殺すことはせず、数千年の人間世界の秩序崩壊と引き換えにもっと手っ取り早い方法を選んだ
天才・柊 真昼が産み出した《鬼呪装備》
開発のために多くの者が犠牲になり
多くの命が踏みにじられた
鬼に精神を喰われるリスクと常に隣り合わせの状態で吸血鬼と闘う
少しでも心に揺らぎが生じれば耳元では鬼が囁き出す
薬や呪具などの小道具のなかにも、禁忌の実験によって生まれたものは数知れず
結局のところ、吸血鬼も人間もこの世界にとっては悪性腫瘍のようなものなのだ
殺しても殺しても、世界の至るところに転移し、繁殖し、そしてまた禁忌を犯す
罪を罪で塗り替えるだけの無意味な負の連鎖は続き、世界を喰い尽くしてもそれは続いていく
それを止めるため、神は“あるモノ”を世界に産み落とした
……終わりのセラフ……
終末の天使
罪深きモノを罰し、清く美しい世界を創造すべく今の醜き世界を焼く
神の生物兵器
だが人間は……日本帝鬼軍は……
その禁忌にすら足を踏み込んでしまった
自分達を滅ぼす呪いさえも力として取り込もうとしている
なんと愚かしい……なんと醜い……
百夜 優一郎……彼が不完全ながらもセラフ化した時……私の中のセラフの因子がそれに共鳴するように疼いていた
私も神の生物兵器
いや、それよりも更に危険なものだ
父の際限のない欲望によって産み出されたヒトならざる者
……クローリーの血を飲む前から私は化け物だったんだ……
雪『今日は随分と悩んでいるね、サクラ』
「……あぁ…」
雪『そんなに自分の生い立ちが憐れかい？』
「いや…これも私の運命だ」
もう……受け入れる他はないからな……
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InaNyan(プロフ) - 全てよみました。体調に気をつけて下さい。待ってます。 (2018年7月23日 21時) (
レス) id: 7122b96239 (このIDを非表示/違反報告)
依紀 - 今日はじめて読みました！体調のほうは大丈夫ですか……？この作品、とても気に入りました！色々と応援してます！頑張って下さい！！ (2018年4月14日 19時) (レス) id: f149e1f30f (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 朔夜さん» コメントありがとうございます！頑張って更新します(≧▽≦) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - すごく面白いです 更新頑張ってください (2017年1月5日 12時) (レス) id: 184ba2587c (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 狼鬼さん» は、はいっ！頑張らせていただきますっ！！(≧▽≦) (2016年10月22日 16時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：★ホームランバッター☆ x他1人 | 作成日時：2016年8月31日 19時
