第２９話 夢のなかの時 ページ42
………なんで………
なんで…幼い頃の身体に戻っているんだ…？
どうして……
『…サクラ』
どうして……母さんが…ここに…？
『サクラ…こっちへいらっしゃい』
「…母さん…」
私は優しく微笑む母に吸い寄せられるように近づいた
母の手が延びてきて、私の頬をそっと撫でる
周りを見ると、幼い頃に私と父と母が住んでいた家の一室だった
よく覚えている……母と私が、いつも父に隠れて遊んでいた部屋だ…
…これは……夢か……
『サクラ…ごめんなさい』
母は目に涙を溜めてそう呟いた
『私には…“あの人”を止めることは出来ないの…』
……母は…私の前では父を“あの人”と呼んでいた
私の頬に添えられたままの母の手は…小刻みに震えていた…
「母さん…」
これは夢……幼い頃の夢だ……
……でも……こうしてまた…母さんに会えるなんて…
『毎晩…神様に祈っているの……貴女の身体がこれ以上壊れませんようにと……“あの人”が…居なくなってくれますように…と……』
そうだ……母さんは祈っていた…
苦しんで苦しんで…神に助けを求めていた
……なのに……
『“あの人”は……貴女を完全な化け物にしてしまう……』
もう化け物だよ……
『ごめんなさい……』
謝らないでくれ…
全部…“アイツ”が悪いんだ
母さんを泣かせるような……アイツが……
「母さん…大丈夫だ……」
母さんが悲しまないように…
「私が……父さんを殺す」
そうだ……あの日の私は…母さんにこう言ったんだ…
父を殺すと、もうあの狂った男の好きにはさせないと…
『サクラ……』
母は私を抱き締めた
何故だろう……夢のなかだと言うのに…
とても温かい…
『貴女が……こんなツラい運命を背負ったのはきっと…神様からの試練よ…』
母はそう囁くと、私に金のロザリオを渡した
血のように紅い宝石が埋め込まれたそのロザリオを、母は私の首に掛けた
『神が貴女に試練を与え続けているのは…きっとその試練を越えた先に、大きな幸福が待っているからよ』
母はそう言って笑った
優しくて温かい笑顔…
(……もう二度と…見ることはないと思っていたのに……)
この夢が覚めなければ良い……
そんな願いが叶う筈もなく…母の姿は揺れ始めた
待ってくれ…あともう少し……もう少しだけ……
「母さん……」
頼むよ……神様……
「愛してる」
このまま……時を止めてください……
雪『サクラ…目覚める時間だ』
そんな雪鬼の声が聞こえた頃には…もう母は居なくなっていた……
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InaNyan(プロフ) - 全てよみました。体調に気をつけて下さい。待ってます。 (2018年7月23日 21時) (
レス) id: 7122b96239 (このIDを非表示/違反報告)
依紀 - 今日はじめて読みました！体調のほうは大丈夫ですか……？この作品、とても気に入りました！色々と応援してます！頑張って下さい！！ (2018年4月14日 19時) (レス) id: f149e1f30f (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 朔夜さん» コメントありがとうございます！頑張って更新します(≧▽≦) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - すごく面白いです 更新頑張ってください (2017年1月5日 12時) (レス) id: 184ba2587c (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 狼鬼さん» は、はいっ！頑張らせていただきますっ！！(≧▽≦) (2016年10月22日 16時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：★ホームランバッター☆ x他1人 | 作成日時：2016年8月31日 19時
