第１１話 母代わり ページ14
……朝だ
「……」
腰掛けていた椅子から立ち上がり、机の上にある食べ物が入った袋を握り締める
外に出ると、空は雲一つない晴天だ
そのまま隣の建物へと向かう
古びたビルだが、その中にある扉の一つに、新しい物がある
「…紗世」
私が扉の前でそう言うと、間髪入れずに扉が開いた
そして、家畜の服を着せられた少女が顔を出す
紗「お姉さん！」
満面の笑顔を浮かべる彼女は、昨日私が助けた少女だ
「元気そうで何よりだ」
そのまま部屋に入ると、そこは大広間だった
その中で、２０人程の子供達が暮らしている
「食事にするか」
私はその部屋の隣にある厨房へ向かい、簡単な料理を作る
手抜きではない…ちゃんと心は込めてある
「…心…」
紗「お姉さん！」
「！」
いつの間にか紗世が隣に来て、背伸びをしながら私の手元を見ていた
「どうした？」
紗「お手伝いする」
……
その姿に…私は思い出した
忘れかけていた…遠い日の思い出…
目を覚ますと、台所の方から庖丁の細かい音が聞こえてくる
私がそちらへ歩いていくと、母が忙しそうに朝食の支度をしている
「…母さん」
母「何？」
振り向いた母の顔は、とても優しかった
「…お手伝い…」
私がそう言って母を見上げると、母はニッコリと笑った
母「ありがとう。じゃあ、お芋の皮剥きお願い」
そうやって、一日が始まった
そして、夕方父が返ってくると
……地獄のような特訓が始まった……
紗「お姉さん？」
紗世の声で、現実に戻った
「あぁ…じゃあ芋の皮剥きを」
私がそう言うと、紗世はすぐに作業を始めた
扉の向こうからは、他の子供達も此方を見ている
可笑しな光景だ…吸血鬼と人間が並んで料理をしているなんて
そして、その光景を見据える者が、もう一人居た
「…何時から居たんだ」
ク「ついさっき来たところだよ」
クローリーがそう言って此方に歩み寄ってきた
紗世の手が止まり、クローリーを見上げる
目は見開かれていて、助けを求めるように此方に視線を移した
「…クローリー…子供達には…」
が、遮ってクローリーは
ク「大丈夫。今はお腹減ってないから」
そう言った
「…紗世、続けよう」
私がそう言うと、紗世はまた作業を再開した
調理をしている間も、クローリーは私達を見ていた
「…暇人だな」ﾎﾞｿｯ
ク「８００年生きてるからね」
…聴こえてたか
「…完成」
なかなか上手く…出来た…のか？
完成したものを子供達に配る
皆笑顔で食べてくれた
ク「母親みたいだね」
そんなことを言ってくる
「母親…か…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
InaNyan(プロフ) - 全てよみました。体調に気をつけて下さい。待ってます。 (2018年7月23日 21時) (
レス) id: 7122b96239 (このIDを非表示/違反報告)
依紀 - 今日はじめて読みました！体調のほうは大丈夫ですか……？この作品、とても気に入りました！色々と応援してます！頑張って下さい！！ (2018年4月14日 19時) (レス) id: f149e1f30f (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 朔夜さん» コメントありがとうございます！頑張って更新します(≧▽≦) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
朔夜(プロフ) - すごく面白いです 更新頑張ってください (2017年1月5日 12時) (レス) id: 184ba2587c (このIDを非表示/違反報告)
★ホームランバッター☆(プロフ) - 狼鬼さん» は、はいっ！頑張らせていただきますっ！！(≧▽≦) (2016年10月22日 16時) (レス) id: 471f1caae5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：★ホームランバッター☆ x他1人 | 作成日時：2016年8月31日 19時
