0.09秒 ページ9
『あ、おはようございます』
「…あぁ、昨日の。おはよう」
電車内で、昨日の彼を見つけた。
窓の外から視線をずらした彼に、景色とか好きなのかな、と思った。
…好きだったら、ゾム君と一緒なのに。
「…景色、とか。好きなんよ」
『えっ……私も、好きです』
「俺も好き」
1部だけ切り取れば、告白のように聞こえるそれに顔が赤くなるのがわかる。
…やっぱり、ゾム君と同じ声でそんな事言うのはズルい……。
「Aさんは、あと、何好きなん？」
『…本、とか。景色だったら桜が好きです』
「ええな、桜。俺は割と渓谷とか好き」
『ザ自然って感じですね』
と、ここまで会話してふと、この人に苗字教えたっけ？と思った。
知り合った、というか顔を合わせたのは昨日が初めてだし、校内では会ってない。
……なんで知ってるわけ。
悪寒が走った腕を抑えながら、彼に聞こうと一呼吸。
『あの、』
《○○駅〜、○○駅〜。お降りの際は足元にご注意してください》
車内アナウンスに遮られ、結局聞けなかった。
大人しく何も聞かないでホームに降りると、後ろから彼も着いてきた。
やっぱり聞かないのはムズムズするし…ともう一度。
『あ、あの、』
「あっれ、ゾムやん！今日はAと一緒に居ってもパーカー被らんのや」
「ばっ、シャオロン！！」
また遮られたと思ったら、朝練に行くであろう格好のシャオロンがニヤニヤした様子で立っていた。
え、待って……今、ゾムって言った？？？？？？
ん！？！？！！
「俺朝練あるからまたな！」
「お前、食害コースやからな！」
『あ、うん、また』
ダメだ着いてけない……え、助けてくれた人とゾムは一緒？？？？
つまり、私がキュンとしたのもドキドキしたのも、全部……
「…え、ええ、えと、だ、騙すような、ことして、」
『ほんとにゾム君だ』
吃音になる目の前の彼が本当にゾム君だとは信じきれなくて、でも、急に吃る彼に謎の安心感を抱いた。
「他人に自分の事分かってもらおうなんて思うなや」
ふと、昨日のコネシマ君の言葉を思い出した。
あぁ、そうだよ。
ずっとこの気持ちに気づいていけないと思って、クラスメイトから距離を取っていた。
……でも、もう。ゾム君にそんな事できない。
ポケットに入っている飴を握りしめた。
'
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 441人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
伊玖(プロフ) - #ゆー@金欠民族さん» メンバー見て、書くしかないなと！！面白いと思ってもらえて良かったです！これからも頑張ります〜！！ (2021年3月1日 20時) (
レス) id: bedb32b5c2 (このIDを非表示/違反報告)
#ゆー@金欠民族 - めっっちゃおもしろかった！！w最後のページw､､､終わり方好きおもしろい！！これからも頑張ってください！！ (2021年3月1日 20時) (レス) id: 3046ae6781 (このIDを非表示/違反報告)
伊玖(プロフ) - 貴女の神さん» sukiyaki douzo。 (2021年2月28日 20時) (レス) id: bedb32b5c2 (このIDを非表示/違反報告)
貴女の神 - watasimo (2021年2月28日 19時) (レス) id: 94909bedb8 (このIDを非表示/違反報告)
伊玖(プロフ) - つぶしたおもちさん» tabetai。 (2021年2月28日 19時) (レス) id: bedb32b5c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
