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「日原心陽。」
自販機で適当に選んだ飲み物を片手におにぎりを頬張っているであろうコネシマの方へ帰ろうとした矢先、最近噂の女の子の名前が耳に入る
「あれ、今ちょっと反応しました？」
途端に明るい口調に切り替わったのにも違和感を感じ、注意深く観察してみればコネシマからは死角になるような位置に一つの人影が見えた
その正体は遠目に見ていてもこちらからすれば十分に分かった
声に聞き覚えもあったし、それよりも決定的なのはその人影の体躯だ
身長が飛び抜けて高いそれは見覚えがあった
「"容易に近づくんじゃねぇ"って警告したかっただけなんで覚えておいてくださいね、じゃあここらで失礼します！」
軽々しく、そして冷たく言い放った人影基チーノはコネシマの前に姿を現すことなくその場を立ち去ろうとしていた
コネシマから見えないように、少し遠回りしても彼には追いつけるだろう
コネシマはこういったものには特に気にしないような性分だとは思うが、どうしても気になったのだ
どうしてここまで固執するのか、単純に気になるからという理由では説明のつかないところまで探ろうとしているのか
「チーノ。」
「あれ、鬱島先輩？」
先程と同じ声で挨拶をするチーノ
その姿が確りと見えると、尋問しようとした口を閉ざし驚く
「そのチケット！」
コネシマから受け取ったチケットを隠すなんてことも忘れるくらい、チーノの表情が衝撃的だったのだ
一見軽々しく陽気に思えるが芯は冷たい、そんな声を出している彼は驚くほどに泣きそうな顔をしていたのだ
「お前、なんでそんな顔....。」
「え？やだなぁ、何がです？」
「何でもないで、このチケットがどないしたん？心陽ちゃんに何かあんの？」
「...あんたには関係ないやろ。」
如何にも威嚇しているその表情は、彼にしては珍しいものだろう
少しの間言い合いをしているだけだが、それでも外面に関しては良く保つ方の人間だと分かった
「分からんのよねお前。」
「は？」
「初めは生徒会の先輩として見極めてんのかと思ったけど、それじゃシッマに話しかける理由が分からへん。今度はチケットに反応するやん、なんなん？」
これは本心から思っていたことだ
もしかしたら心陽ちゃんはチーノにとって大切な人なのかもしれない
それならばなぜ警戒心剥き出しの顔だけでなく、悲し気な表情をしたのか
どう考えても答えが導き出せなかったのだ
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作者名：みつくろりん | 作成日時：2021年12月6日 0時
