・ ページ45
・
『あ、着いたよ。』
予告もなく、着いた先に俺は唖然とする。
｢まじ？｣
『まあーぢ。』
そこは、住宅街にも関わらずなんの看板も立っていない、寂れた廃ビルがポツンと立っているだけだった。
｢俺、Aのセンスが恐ろしいわ。｣
『なにいってんの？早く入るよ。』
ついていかないと置いてかれる、と慌ててヌナの着ていた服の裾をつかみ恐る恐る廃ビルの地下へと進んで行った。
きっとヌナは幽霊とか怖くないんだろうなあ。恐れ知らずというか......。そういえば公園でのビラ配りもヌナは率先してパフォチを引っ張りながら声をかけてくれてたっけか。
いつもいつも、この自分より小さな背中を頼りに知らない場所へと歩んでいたのか。
なんて、少し感傷に浸りながら地下へと潜っていくと、お姉さんがお兄さんか分からない怖い人がカウンター前に立っていた。
『やっぴー、来たよ〜。』
｢あ、ちょっ！！｣
このヌナーっっ！恐れ知らずもいい所だよ！
こないだスングァ二がクタクタになって帰ってきた時のことを思い出す。あの時も二度とAとは出かけないと涙目で言っていた。その理由が今わかった気がする。
｢ああ、Aか。｣
『もうちょっと嬉しそうにしてよね。』
Aはそう言うと、唇をとがらせ、つけていたサングラスを外した。Aの呼びかけに答えた店員は、目ざとくも後ろで隠れている俺を見つける。
｢今日は可愛らしい子連れてるのね。｣
『良いでしょ〜自慢の弟分。』
｢...ど、ども。｣
可愛らしいとはお世辞だろう。店員は上から下までと視線をうつし、まるで値踏みをするように俺の事を観察した。
｢ふーん、奥に入れば？｣
『ありがと、』
続けて『らぶ〜』と彼女はいい、今度は奥へと俺の背中を押していく。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 398人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：もく�� | 作成日時：2023年3月13日 22時
