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母さんは目に涙を浮かべながら、僕を力いっぱい抱きしめてくれた。
「……母、さん」
母さんは肩を小さく震わせて泣き始めた。
そしてゆっくりと顔を上げて僕の目を見つめる。
「本当にお母さん、ダメな母親で…アナタがこんなことになっているだなんて気づけなくて…」
「全部お母さんが悪いの…ごめんね、ユウ…本当にごめんね」
嗚咽しながら必死に言葉を紡ぐ母は、優しく頭を撫でてくれた。
とても優しくて暖かい手だった。
でもなぜかその感覚が妙に懐かしく感じ、そして胸を締め付けられるほど悲しかった。
「ユウやイリアに淋しい思いをさせないようにって、仕事ばっかりで……まともにご飯も作ってあげないで……」
母さんは泣きながら言葉を紡ぐ。
「母さん」
「泣かないで」
「僕はもう大丈夫だから」
そう言って母さんの頭をそっと撫でる。
すると母さんはまた肩を震わせた。
そして恐る恐る口を開く。
しかしそこから出てくるのは嗚咽と溢れる涙だけだった。
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年12月6日 7時