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僕が動揺している間にも、イリアは徐々にその距離を詰めていく。
僕の居る位置の少し手前でようやく動きを止めると、僕に言葉を投げかけた。
「久しぶりだね、兄さん」
その声も、僕を心配する時の表情も、昔のまま変わらない。
「優しい兄さんのことだから、正面からきちんと話せばわかってくれるって思ってたんだ。今までだって、そうだったでしょ?……でも、今の兄さんは違う」
イリアは淡々と話を続ける。
表情や声色はいつもと変わらない。
しかしその口調には、怒気や悲嘆のようなものが滲み出ている。
「兄さん、どうしてわからないの?僕は兄さんのためを思って言ってるんだよ?」
そしてイリアは、 僕をまっすぐ見据えた。
ここで諦めてはいけない。
僕は何があっても帰らなきゃいけない。
みんなと約束したから。
たとえ弟に引き留められようが、この気持ちは変わらない。
僕がそう答えると、イリアは少しの間目を閉じた。
そして再び目を開き、僕を見ると小さくため息をつく。
「…分からないよ兄さん」
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年12月6日 7時