孤独な羊にIを添えて 3 (ページ48)

今日:21 hit、昨日:5 hit、合計:557 hit

・ページ48

ぼんやりと燃えるような空が広がり、鈴虫が鳴きだす。

静かすぎると孤独を感じてしまうので、こうして紛らわせてくれるのはありがたい。

「おにーちゃん、かなしい？」

ガキは純粋な声で聞いてくる。

まだそこにいたのか

「…悲しくねぇ、あっち行ってろ」

「おにーちゃん、かみのけきいろ、かっこいい」

コイツしつこいな

「…分かったから、あっち行ってろ」

いい子はおうちに帰りましょうってさっき無線で言われただろ
早く帰れよ

「…おにーちゃん、これ痛い？」

「…あ？」

ガキは俺の腕に巻かれた包帯を指さしている。

これもまた、別の奴と取っ組み合いになってできた傷だ。

包帯には血が滲んでいる。

そういえばまだ変えてなかったっけな。

「…」

俺はガキの言葉に答えないままでいた。

すると何を思ったのか、ガキは持っていた肩掛けのバックから四角い箱を取り出した。

その箱は白く、留め具の上の部分には赤十字が印刷されている。

(救急箱…？)