孤独な羊にIを添えて 3 (ページ44)

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「…ママ、ご飯は？」

「…」

母さんは机に突っ伏したまま何も言わない。

「…ママ、おなかすい「うるさいっっ！！！」」

二度も同じことを言われた母さんは苛立った様子でビールの空き缶を俺に投げつけてきた。

空き缶は自分のすぐ前の床に勢いよく叩き落され、何回か跳ね上がるとゆっくりと自分のところまで転がってくる。

母さんの目が錯乱していることは幼い頃の俺でも分かった。

肩を上下に動かし、言いたいことを言ってすっきりしたのか、母さんはまた机に突っ伏してしまった。

このように毎晩毎晩怒鳴られ、殴られる蹴られるのも日常茶飯事だった。

そんな家で俺の居場所などあるわけが無い。

だから俺はいつも外で過ごしていた。

朝早くに家を出て、どこか適当な場所で時間をつぶしてから夜遅くに帰宅というルーティーン。

夏の直射日光が降り注ぐ日も、冬の手足が凍えてしまいそうな雪の日も、この生活は変わらなかった。

そんな生活が続いていたある日

その日の俺は商店街を歩いていた。別に目的があった訳では無く、ただなんとなしに。

商店街の通りを歩いていると、向かいから俺と似たようなチンピラが歩いてきた。

他校の制服を着ている。

嗚呼これはめんどくさいことになりそうだ、と俺は地面に目を向けた。