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二人が歩き出してから一時間程経っただろうか、二人はまだ図書館までたどり着いていない。
見渡す限り真っ暗な景色が続くばかりである。
(……暗いな)
「なぁ、ユウ、あのウィリーが言っていた図書館にいけば、ユウが現世に帰る方法が分かるってことだよな」
「うん、ウィリーさんがそう言っていたんだ、間違いないよ、たぶん」
「そっか、じゃあ頑張らないとな!」
ランスは元気にそう言う。
「うん」
(でも……)
ユウは少しうつむく。
(僕が現世に帰る理由なんてあるのかな……)
ユウは不安だった。
仮に帰れるとしても、元の世界に帰ってもそこにはユウを待ってくれている人などいないのではないか、と。
それにもし帰れたとしても、また辛い思いをするのではないか、そう思うとユウは素直には喜べなかった。
「...ねぇ、ランスお兄ちゃん」
「ん?」
ユウの声にランスは後ろを向いた。
「...僕、自分が生きたいのか、死にたいのか...よく、分からないんだ」
「……」
ランスは、何も言わなかった。
ただ、黙ってユウの言葉を聞いた。
「イリアはいないし、ランスお兄ちゃんもカイリもいない...みんなが居ない世界で生きてくなんて、無理かもしれない...でも、心の何処かで死にたくないって思っているんだ」
「……」
「僕が生きている意味ってなんだろう……カイリもイリアも居なくなってしまった。僕だけが取り残されたのに、僕はまだ生きたいと思ってる。生きてても何の役にも立たないのに」
ユウの言葉にランスは下を向いたが、一つ息を吐くと真っ直ぐにユウを見た。
「……なぁ、お前って本当に自分の事よく分かってないよな」
「え……?」
予想外の言葉にユウは目を丸くした。
そんなユウを無視して、ランスは続けた。
「お前はな、人の為に生きるのが当たり前だと思ってる。その根本にあるのは、自分が生まれた理由だ。誰かの為に生きている……それが正しいと思い込んでるんだ」
「誰かの為じゃない、自分の為だよ。自分の存在が役に立つからみんなと生きてるんだ」
ランスは首を振った。
そして、ユウに手を伸ばした。
ユウは思わず目を閉じたが、頭に置かれた手は優しく撫でただけだった。
「じゃあ聞くけどよ、お前はお前の為に何をした?」
「……え?」
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あまちゃん(プロフ) - リョウナ@幽霊さん» コメントありがとうございます!そんなに褒めていただけて嬉しいです😭励みになります🔥💪🏻 (10月23日 17時) (レス) id: 86f5249162 (このIDを非表示/違反報告)
リョウナ@幽霊 - この作品好きです!めっちゃ大好きです!!更新とか頑張ってください!! (10月23日 16時) (レス) @page23 id: e32eeebb6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年10月1日 8時