ひつじがにひき ページ10
またしても風景が変わり、ますます混乱する頭を抱えながら周りを見てみる。
建物は至って普通の繁華街のような場所であるものの、店で食事をとる者も、道行く者も、皆人間では無い。
その時、美味しそうな匂いが少年の鼻をついた。
それにつられるように少年のお腹はぐう、と鳴った。
そういえばご飯を食べていない。
少年は空っぽの胃袋を摩った。
その匂いの正体はすぐに分かった。
それは軽食屋で売っている食べ物の香りだった。
食欲を唆るような匂いが漂ってくる。
少年はボロ布を引き摺りながらお金を持ってないことを忘れて引き寄せられるように店内に入った。
中に入ると、店員らしき者がこちらに気がついたようで声をかけてきた。
その店員はテレビ型の頭からはいくつものコードが伸びており、ユラユラと静かに揺れ、画面には横向きで=)が映し出されている。
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
少年は焦る。
今更自分がお金を持っていないことに気づいたからだ。
後先考えずに店内に入ったことを後悔し、少年は少し泣きそうになる。
「どうしたのです?」
「えっと...その...」
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年4月9日 22時