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「ユウ、どうしたのー?」
「ぇっ?」
はっと我に返るとセレアがユウの顔を覗き込んでいた。
「さっきから一人で百面相してるから、どうしたのかなーって…あ、やっぱり怖くなっちゃったとか?」
ニマニマと笑う彼女から少しばかりか悪意を感じた。
「そ、そんなわけないよッ!僕もう小さい子じゃないんだから!!」
ユウは心の内を見透かされないように、強がってそんなことを口にした。
むしろ逆効果だと思われるが。
「あははっごめんて、冗談だよ〜。からかってみただけ」
手をひらひらと振ると彼女はまた前を向いて歩きだした。
ユウはその場所につくまでの間、お化けにおびえながらも弟に会えますようにと願うのであった。
ー
しばらく歩くと、大きな洋風の建物が三人の前に姿を現した。
それはかなり年季が入っており、壁はひび割れ、庭園の草木は荒れ放題で、いかにも幽霊屋敷と言わんばかりの風貌を漂わせていた。
ユウはごくりとつばを飲み込む。
「本当にここに人間がいるの?」
「うーん…その筈なんだけどなぁ…」
建物の近くには破れた「立ち入り禁止」のテープが落ちている。
三人は建物の門をくぐり、荒れ放題の玄関からそろりと中を覗いた。
「あのー、すみませーん」
セレアが大きな声で声をかける。
返事は返ってこず、唯々静寂と重々しい空気が建物内に充満しているだけだった。
ユウはもう一度後ろを振り返ってみる。
「(あれ)」
今まで三人が通ってきた道はいつの間にか消えており、代わりに大きな木と背の高い草が生い茂っていた。ここは、やたらむやみに足を踏み入れてはならない土地だったのかもしれない。
「もしかしたら奥の部屋にいるのかも」
「そうだよね、ちょっと行ってみよっか」
ユウが二人の居た方を見るとそこに二人はもういなかった。
「ろ、ローリー?セレア…?」
ここにはユウ一人。
ユウが後ろを見ている間に、二人は先に建物の中に入っていったのだ。
「ま、待って!おいていかないで…!」
ユウは慌てて建物の中に入った。
その様子を、二階の窓から見ている者がいるのも知らずに。
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作者名:あまちゃん | 作成日時:2023年4月9日 22時