ひつじがいっぴき ページ1
僕には双子の弟がいる。
誰にでも優しくて、勉強が出来て、運動も出来る。まるで絵に書いたような完璧超人だ。
だから皆はいつも弟の周りにいた。
僕も弟のことを尊敬していたし、何より兄弟だから、大切に思っていた。
でも皆は違った。
完璧な弟に比べ、僕は勉強も出来ない、運動も出来ない、皆には無い角が生えている。
だから皆は笑った。
自分たちと違うから、弟よりも劣っている兄だから、と笑われた。
なんで笑われているのか分からないから、僕も笑ったら、叩かれた。蹴られた。
...痛かった。
普通じゃないことが悪いことなのか、
僕には分からなかった。
気がついたら身体中痣だらけになっていた。ふとズボンの影から痣が見えた時、弟は僕を心配した。
表情からして
弟はきっと僕が皆からされたことを知らないだろうから、僕は黙っていた。
親にも心配されたけど、僕は言えなかった。
我慢すればきっと━━━━━━━━━
なんて考えていた。
そして気がついた時、
僕は宙に浮いていて
「兄さんｯ！！！」
最後に見たのは弟の焦った顔だった。
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「イリア…？」
ぼそりとつぶやかれた少年の声。
部屋の環境音と一体化するくらいに掠れている。
少年はベッドの上で目をぱちくりさせた。
「……体…動かないや」
まるで自分の体がどこか別のところにいってしまったみたいに。
鉛のように重い少年の体には、いくつもの包帯が巻かれている。
「…イリア...何処にいるの？...それに僕、どうしてここに、いるんだっけ」
少年にはイリアという弟がいた。
つい先程まで一緒にいたはずなのだが、何故かここにいるのは自分一人。
うーんと頭を悩ませていると、ガタガタと窓が鳴った。
少年はその音を聴くと、ビクッと身体を震わせた。
そして恐る恐るというふうにゆっくりと首を動かし、窓から外を見る。
「うわッ！」
少年は窓の外を見るなり飛び退いた。
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作者名：あまちゃん | 作成日時：2023年4月9日 22時
