5:ライバル ページ6
くしゃりと頭に重みを感じ見上げると、父がいやに優しい顔をして私を見下ろしていた
「良かったじゃねぇか、ライバルができてよ！」
「ライバル？……こんなのが？」
ゼフの足元で此方を見ていたサンジに向けてそう言うと、サンジは直ぐに険しい表情になって抗議の声を上げる
「っ何だと…！？」
「負ける気がしない」
ぐぬぬ、と悔しそうにするサンジに、父とゼフは豪快に笑った。
そもそも、客前に立ったことのない料理人に、私が負ける要素がないのだ。
「サンジ、今度はウチの食堂に飯食いに来い！目ん玉飛び出るくれェ旨い飯食わせてやるからよ！」
「ぉ、おう！！」
「んじゃーゼフ、世話んなったな！お前の元気そうな面が見れて良かったよ！」
「こっちの台詞だぜディソベ！その内お前の店にも顔を出す！」
「お〜ぅ！待ってるぜ！！じゃあなゼフ、サンジ！」
ブンブンと手を振りながら見送るサンジをちらりと見てから、小舟に乗り込む。
この辺の海域はまだ波が穏やかだし、航海だって難しくないからこの位小さな船でも良いらしい。
「どうだ、A」
「何が？」
ざぁ、と波が音を立て、塩の香りを運ぶ。
でかくて目立つバラティエは、しばらく進んでも、視界から消えはしなかった。
父は楽しそうに海の向こうを見つめて笑う。
「ちっとは刺激になっただろ？……世界は広い、この
「……」
「もっと学べ、色々見て、聞いて、食って、出逢って、んで、デカくなれよ、A」
そう語った父の横顔は、どこか切なげで、寂しそうだった。
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作者名：かなで x他1人 | 作成日時：2019年10月3日 21時
