45:不味い ページ46
ふわりと焼き上げたチョコレートのスフレに、トロリとしたチョコレートソースを絡めて口に運ぶ。
しゅわりとほどけたスフレに、濃厚なチョコレートソースの甘さが鼻に抜けていく。
───しかし、後に引くこの甘ったるさ。
チョコレートの持つ雑味と、舌にまとわりつく様な甘味。
……たしかに、「不味い」……。
フォークを置いて溜め息を吐く。
一緒に出した紅茶も、同じ様に淹れて、一緒に飲む。
紅茶事態に問題はない。
やはり、このしつこいまでの甘味と、仄かな雑味をどうにかしなくてはならない。
「ん〜……」
甘味のせいで僅かな苦味が雑な味を産み出している。
ならば、もう少し甘味を消すようなレシピに変えるべきだろうか？
例えば中身のチョコレートソースを、ミルクではなくブラックチョコレートで作るか。
それとも、スフレの方の甘味を取り除くべきだろうか。
いや、それだけじゃダメな気がする。
チョコレートの単調な甘味だけでは、舌が飽きて、喜びが無い。
だったら─────
「おっと、取り込み中かい？」
「ぁ……黄猿さん」
ひょこりと顔を出した黄猿さんに立ち上がろうとすると、そっと肩に手を置かれ、大きな体を屈めて、視線を会わせる。
薄い色のサングラスの向こう、タレ目がちの優しげな瞳がゆるく細められた
「珈琲を貰いに来たんだが……顔色が悪いねぇ？」
「そうですか？あ、珈琲ですね、すぐお淹れしますから」
直ぐに立ち上がって珈琲カップを用意し、お湯を沸かしながら、豆とドリッパーを準備する
「Aちゃん、ドフラミンゴに言われたことを気にする必要は無いよォ？」
「……いえ、あの人、ドフラミンゴさん？の仰ることはごもっともでした。……ふふ、
ペーパーフィルターを用意して、挽いた豆の上に、ゆっくりとお湯を注いでいく
「Aちゃん」
ぽす、と、頭に大きな掌が乗せられ、優しく頭を撫でられる
何も言わないまま、じっとそうしている黄猿さんに、ふと、懐かしい仏頂面を思い出す。
あの人は、旨いとは言わなかったが、不味いとも言わなかった。
抽出した珈琲をカップに注ぎ、黄猿さんを見送ったあと、私は一人、再び溜め息を吐き出した。
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作者名：かなで x他1人 | 作成日時：2019年10月3日 21時
