41:料理長 ページ42
「……ほんと、何してんだろ、私」
仰ぎ見た天井には煌々と灯りが点っており、室内には激しい雨音のように油が跳ねる音と、芳醇なスパイスの香りに満ちている。
「ハザマ
「……醤油を一
「ありがとうございます!」
「料理長!こっちもお願いします!」
「天ぷらの衣ですが──」
「カレー売り切れましたァ!!」
「コロッケも残り三個です!」
私の現在地は食堂────それも、海軍本部の、である。
ポーラータング号を出てがむしゃらに走っていたところを別の海賊団に捕まり、何故か人質にされたかと思えばすぐに駆け付けてくれた海軍さんに救助された
そこまでは良かったのだが、宿無し、職無し、船も無しの私を哀れに思ったらしいその人が、私をここまで連れてきたのである
何ができるかと聞かれ、何も考えずに「料理ができます」と伝えれば、まさに戦場たる調理場に放り込まれたと言うことだ
「お、Aちゃんじゃん、調子どうよ〜?」
ひょこ、と食堂から此方を覗き込んだのは、私を助けてくれた海兵さんの上司だと言う"青雉"さん。
普段は本部に居ないと言う海兵さんに代わり、よく気にかけてくれるイイ人だ
「最近食堂の飯が旨くなったって評判でさぁ、久々に食ってみようかなって、あ、おれカレーね」
「カレーは売り切れたとこですよ」
「えっ、マジで?売り切れなんて聞いたことねぇからびっくりしたわ……んじゃ〜、天ぷらうどん頼むわ」
「了解です」
にこ〜っと笑みを浮かべた青雉さんに番号札を渡して、下処理を終えた海老、イカ、大葉に揚げ衣を付け、油の中へと踊らせる。
同時にうどんを茹でながら、かき揚げを作る。
間に挟まれる味見に指示を出しながら、ザックリと黄金色に揚がった天ぷらを、丁寧にうどんの上へ盛り付けた
「天ぷらうどんお待たせしました〜」
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作者名:かなで x他1人 | 作成日時:2019年10月3日 21時