検索窓
今日:10 hit、昨日:6 hit、合計:90,995 hit

41:料理長 ページ42

「……ほんと、何してんだろ、私」


仰ぎ見た天井には煌々と灯りが点っており、室内には激しい雨音のように油が跳ねる音と、芳醇なスパイスの香りに満ちている。


「ハザマ料理長(シェフ)!チェックお願いします!」

「……醤油を一(まわ)しと塩で味整え直してください」

「ありがとうございます!」
「料理長!こっちもお願いします!」
「天ぷらの衣ですが──」
「カレー売り切れましたァ!!」
「コロッケも残り三個です!」


私の現在地は食堂────それも、海軍本部の、である。

ポーラータング号を出てがむしゃらに走っていたところを別の海賊団に捕まり、何故か人質にされたかと思えばすぐに駆け付けてくれた海軍さんに救助された

そこまでは良かったのだが、宿無し、職無し、船も無しの私を哀れに思ったらしいその人が、私をここまで連れてきたのである

何ができるかと聞かれ、何も考えずに「料理ができます」と伝えれば、まさに戦場たる調理場に放り込まれたと言うことだ


「お、Aちゃんじゃん、調子どうよ〜?」


ひょこ、と食堂から此方を覗き込んだのは、私を助けてくれた海兵さんの上司だと言う"青雉"さん。

普段は本部に居ないと言う海兵さんに代わり、よく気にかけてくれるイイ人だ


「最近食堂の飯が旨くなったって評判でさぁ、久々に食ってみようかなって、あ、おれカレーね」

「カレーは売り切れたとこですよ」

「えっ、マジで?売り切れなんて聞いたことねぇからびっくりしたわ……んじゃ〜、天ぷらうどん頼むわ」

「了解です」


にこ〜っと笑みを浮かべた青雉さんに番号札を渡して、下処理を終えた海老、イカ、大葉に揚げ衣を付け、油の中へと踊らせる。

同時にうどんを茹でながら、かき揚げを作る。

間に挟まれる味見に指示を出しながら、ザックリと黄金色に揚がった天ぷらを、丁寧にうどんの上へ盛り付けた


「天ぷらうどんお待たせしました〜」




42:元帥→←40:出航



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.3/10 (38 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
83人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かなで x他1人 | 作成日時:2019年10月3日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。