33:魚河岸 ページ34
「かし？かしって、おかし？」
首を傾げた私に、父はぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜながら笑っていた。
あれはいつの事だっただろうか？
「っははは、チゲェよ、
そう言って、父は私のお腹にぎゅっと麻縄を結びつけて、その片端を自分の腹に巻き付け、括った
「って！縄！？」
「おう！手ェ繋ぐなんて温いことしてちゃあっちゅう間にはぐれるからな」
「温いって…」
「おら、さっさと行かねぇと良い魚が無くなっちまうぞ！」
「っぐぇっ、」
わくわくした父の横顔に引っ張られながら、私は人の波の中に引きずり込まれた。
「────Aちゃん？」
「っあ、すみません、え〜っと、」
相変わらずの人混みに、どうやらぼーっとしてしまっていたらしい。
予想通りの魚河岸には、馴染み深い魚達や、見たことの無い海王類なんかがずらりと並べられている。
「うおぉ！？あれ見ろよ！メチャクチャでけぇ魚！」
「鮟鱇ですね、鍋、唐揚げ、ソテー…何にしても美味しくいただけますし、何につけても、この胆は絶品ですよ」
「食いた過ぎるっ…！」
「鮟鱇なら捌けますから…買っていきましょうか」
吊り下げられた鮟鱇を注文し、序でに鮮度の良い魚を幾つか頼む。
父について魚河岸に来てはいたが、やはり目利きはまだまだ未熟と言わざるを得ないかもしれない。
魚の次は肉、野菜、調味料に、スパイス、調理器具なんかを購入し、三人とも丸々とした荷物を背負ったまま船へと戻ることにした
「っあﾞ〜〜〜つかれた！！」
「すみません、ついつい買いすぎちゃいましたね」
荷物を整理しながら、ふと思い出す。
……そう言えば、私この島で彼等から逃げ出すつもりだったんだっけ？
すっかり忘れていたことに肩を落とした瞬間、私の背中には、忘れたくても忘れないであろう特徴的な……いや、威圧的な声が掛かった
「おい
「ひっ…！？は、はい！！」
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作者名：かなで x他1人 | 作成日時：2019年10月3日 21時
